8番目、最後の質問 「身近に司法書士さんがいなく、入ってくる情報が予備校の謳い文句か、暗い噂話なので心配ですがどうなんでしょうか」
司法書士の登記申請代理にしろ、行政書士の官庁提出書面作成代理にしろ、税理士の税務申告代理でさえ、規制改革とIT化の今後の進展によってはその業務が21世紀の職業として、現状のままで、発展性のあるものであるかどうか私は疑問に思っている。
規制改革とIT化は、両方相まって、生産者と消費者間の中間コスト、手続きコストを削減して、企業の競争力を高めようというものであるから、高度な裁量的判断や法律解釈、利害関係当事者への調整力といった能力を必要としない、形式的手続き代理業はなりたたなくなるか、激烈なコスト競争にさらされることになると思う。
こうした厳しい将来が予想されるというのに、司法書士受験生はかえって増えている(勤労者でも取得できる、つまりロースクール外で取得できる法律資格は司法書士しかないのでそこに集中して来ているのである)。そこで、予備校も、ロースクールでの司法試験受験生減少対策もかね、再び、生徒獲得にやっきとなり始めた。そして、相変わらず、ばら色のビジョンを展開して受験生の不安を打ち消そうとする。そのためには業界著名人の言葉を顔写真入りで紹介したり、開業2年で年収1000万円とか、平均年収1300万円(日司連調査)などとパンフレットに書いたりする。年収1000万円は嘘ではないだろうが、この所得は個人事業者だから、その経費込みの年収なので、事務所等諸経費を支払えば司法書士の実質年収は300万円なんてことになってしまう。
一方、司法書士事務所関係者からの噂話は暗いものばかりというのも良く理解できる。不動産バブルは、不動産への過剰融資と差益狙いの不動産回転売買とからなっていた。その融資においても所有権移転においても、その手続きを一手に担っていたのは司法書士だった。そのバブルが崩壊したのだから司法書士業界が不景気になるのは当たり前である。その沈滞状況のもとに、業者間競争が導入され、かつコンピュータ登記が目前のものとなってきているのだから、いっそう大変である。
しかし実際は暗い話ばかりというわけでもない。業者間競争の現実に立ち向かい、ITを駆使して、事務効率を2倍にも3倍にもして昔では想像できないような高収益率を上げている事務所もある。ITを活用すれば、事務員一人当たり月売上高300万円も難しくはない。
受験生への最後の質問に対し、結論として言いたいのは、結局、貴方にとって重 要なのは貴方の人生なのであって、資格というのはその人生の富を実現するための単なる資格でしかないということだ。そして、その資格の、資格取得者にとっての経済的価値は、資格というものがそもそも経済社会の要請から産み出されたものなのであるから、その時々の経済状況から影響を受けるのは当たり前のことなのである。
では人生の富とは何であるか。それは満足的人生を生きることだろう。その満足的人生にいくら金が必要でいくら稼がなければいけないか、それは全く、それぞれの個人の問題ということである。人生をゆっくり生きるのも、一発勝負で生きるのも、3倍の人生を生きてやろうと思うのもそれぞれの好みと選択の問題で、選択の自由が確保されていることこそが自由社会においては最も重要なことである。
ここで、現役司法書士の諸君にも言っておきたい。司法書士としての生き方もそれぞれである。ゆっくりのんびり生きてゆくことは、今でも可能なのではないか。もちろん稼ごうと思えばそれも可能だ。ようするに独占の保護はなくなった。この事実をどう乗り越えて行くか、それだけが司法書士にとって問題なのだ。
そして、とにかく「司法書士である前に、一個の自由な人間だ」と私は何時もそう思っている。
ではがんばって!!
終わり |