相談事例の中から、モデル的事例を二件ご紹介した。個人民事再生の事例と過払い金返還請求の事例も取り上げたいが、本稿は、事例研究を目的とするものではないので、今回ご紹介する事例を最後に先に進むことにしよう。
普通に暮らしていた人たちでも生活に何か大きな事件が起きると!!
前回までにご紹介したモデルでは、(1)普通に暮らしていた人たちでも生活に何か大きな事件が起きると、現在の核家族ではその対応が困難となり、その困難のもたらす経済的困難に対し、消費者金融が大きな影響力を持っていること。その高金利は生活破綻の原因となり、借り手の信用力を無視した過剰融資が、その破綻への転落を加速化し決定的にするということ。(2)破綻予備軍であるVISAやマスターカード所有の、金融に対する無知どころか、家計、自己の消費と収入についても無関心という、両親と同居している独身男性や女性というパターンを示した。このような破綻パターンは、現在の消費者信用市場の構造が変わらない限り、半永久的に再生産されて行くことになる。この病理を支える金融取引上の原因は、明らかに高金利と過剰貸付にあるのであるが、重要なのは、この病理を支えている原因は他にもあり、そのために、金融取引に規制を加えるだけでは、消費者金融からの借り入れを原因とする消費者の経済生活の破綻を減ずることは出来ないということである。その手段としては「事前の対策」と「事後の対策」とがある。事後の対策とは、破綻に陥った多重債務者の救済と生活再建の対策を講じることであるが、破綻に陥った多重債務者の救済については、すでにこれまで述べてきたような各種の法的救済手段がある。事後的救済としては、生活建て直し資金の融資とか職業斡旋などの手段がない日本の現状において、法的救済手段のみが、唯一の事後的多重債務者救済手段となっている。この法的救済手段として、任意債務整理、個人再生、特定調停、自己破産制度があり、その実施機関としては、裁判所、弁護士制度、司法書士制度がある。法的救済手段の実行者は、民間では、弁護士と司法書士に厳格に限定されており、それ以外の者が、この法的救済手段を有料で行使すれば刑事罰を課せられる。最後にご紹介するのは、この法的救済の最近の現状を示す驚くような事例である(一般の人から見れば驚くような話であるが、我々業界の者から見れば又やってるのかという程度の話ではある)。
(3) あきれた弁護士事務所、司法書士事務所が何故あとをたたないか?
相談者 山野相子 主婦 58歳
相談者は夫に連れられてやって来た。夫は会社員で昨年自己破産をしている。夫はヤフーの検索で私の事務所を知った。うつむき加減の妻の表情は不信感と猜疑心とでいかにも暗い。夫が妻に代わって言うには、夫の保証債務2件、妻名義で借りたアコムと三和ファイナンスからの借り入れ、それにクレジット1社の計5件、180万円の債務があるという。説明しながら夫は「先生、弁護士って怖いですわ、普通、庶民は弁護士って難しい司法試験をとおって偉い人で人格も立派と思うじゃないですか。それが、いくら私が自己破産した人間だからといって、名刺をぽんと投げるように渡し、事情もろくに聞かないで金の話ばかりなんですから。私の自己破産の時の先生はフツーだったですよ。だから妻の自己破産はインターネットで調べて自宅近くの、(山手線)大塚駅近くの法律事務所に行ったんです」。その事務所は、インターネットでお馴染みなので私も良く知っている。夫は続ける。「費用は着手金10万円、残額の40万円は、毎月10万円の分割、支払いを2回怠ると辞任するというので、仕方なく10万円を払って妻の自己破産を頼みましたよ。でも金がなくて1回目は支払えず、請求があったので、翌月にあるだけの金、9万円を払いました。すると約束違反だ、辞任すると言って来たので、あわててとりあえず4万円を振りこみました。ところがその4万円をすぐ送り返してきて、辞任は変わらない。約束違反だから19万円も返さないというのですよ」
次回に続く |