現在、設立準備中の「生活サポート生活協同組合・東京」のモデルは岩手消費者信用生活共同組合にある。しかし、今回設立する「生活サポート生活協同組合・東京」(以後、生活サポート東京と呼ぶ)の目的とする事業は、生活相談事業と情報提供事業の二つであって、組合員への貸し付け等の信用事業は行わない。一方、岩手信用生協の主要事業は、組合員となった多重債務者への借り換え資金の貸し付け、いわゆる低利の「おまとめローン」がその主たるものであった。一部の批判にもかかわらず、これこそが、岩手県民からの広く熱い支持の原因となっていた。東京生活サポート生協の場合、多重債務者向けの救済資金の融資については、別に独立に「生活サポート基金」を設立し、必要ある東京生活サポートの相談者には、その「基金」に融資を斡旋する予定である。よく知られているように、「岩手信用生協の『おまとめローン』については、被害者の会やクレサラ対協、弁護士会、司法書士会の一部に以前から強い批判がある。この「おまとめローン」に関しては、日本司法書士会連合会に、代表者河野聡弁護士、事務局辰巳裕規弁護士の両名義で、アイフル被害対策全国会議なる団体(事務局は神戸の合同法律事務所)からの「要請書」が、今年、5月24日に届けられている。
アイフル被害対策全国会議からの司法書士会への要請書
「おまとめローン」とは、多重債務者に「返済資金を融資し、各貸金業者に一括返済させることにより、債務を『一本化』させる貸金業者の商品」(要請書)のことであるが、これにつき「要請書」は、「おまとめローン」の問題点として、
(1)「おまとめ融資の際には、債務者には消費者金融に対する約定債務額を額面どおり返済させている」。その結果、債務者から利息制限法法定充当の機会を喪失させていると指摘する。
この指摘については、確かに異論はない。この点につき、生活サポート東京は、相談事業の一環として「利息制限法以上の利率で借り入れた相談者が、取引履歴を業者から取り寄せる際のアドバイス、実際の債務額についての再計算の代行を行う」(創立総会議案書 51P)として「おまとめローン」に対する弊害を防止しようとしている。もっとも「おまとめローン」業者が「債務者には消費者金融に対する約定債務額を額面どおり返済させている」としても、一括弁済時に、債務者からの返還請求権放棄の意思表示がなければ、それにより過去に生じた過払い金返還請求権が無くなるわけでもないし、後日の訴訟による返還請求は可能と思われるか ら、それで直ちに「債務者から利息制限法法定充当の機会を喪失させている」とまでは言えないだろう。「おまとめローン」の問題点として、「要請書」は、他に「おまとめローン」が、
(2)過剰融資の危険性、多重債務の悪化の原因となるとし、多重債務者は「もともと返済能力を超える貸し付けを受けている破綻状態のものであることが多い。かような者(公文書で代表者弁護士が多重債務者を「かような者」呼ばわりをするのは失礼である=筆者)に必要なのは、問題を先送りする『おまとめローン』による一本化ではなく弁護士等専門家による早期の法的債務処理の選択である」と「おまとめローン」による過剰融資の危険性、多重債務の悪化の危険につき警告している。
しかし低金利の「おまとめローン」に切り替える選択が総て「違法」として否定されなければならない理由はない。業者のブラックリストに載りたくない人もいるし、親兄弟の肩代わり弁済もある。弁護士等専門家による債務整理は一般に計算が不透明で、しかも報酬が高く、利回りで考えれば「おまとめローン」を利用したほうが安い場合もありうる。国民一般の感情としては、「弁護士等専門家による早期の法的債務処理の選択」は出来ることなら避けたいというのが実情なのである。弁護士等専門家が存在するにもかかわらず、岩手信用生協が「おまとめローン」により成功したのは、そのことを物語っている。
問題点の(3)として「おまとめローン」が「保証人被害・不動産担保ローン被害の原因」となると指摘する。
この指摘についても誤りではない。実際、住宅ローン特例付個人再生を実行する時に、「おまとめローン」の不動産担保の抹消にしばしば苦労させられて来た。せっかくの個人再生の機会を奪ってしまうばかりか、優先弁済を事実上強制されてしまうことになるのである。しかしこの場合においても、それだからといって「おまとめローン」一般を否定する根拠にはならない。確かに不動産担保「おまとめローン」は「債務者の無知と窮状に乗じて債務者の自宅などから回収することを当初から予定した、いわば略奪的な融資形態である」(要請書)ことは事実である。しかし、だからといって「おまとめローン」での人的保証、担保一般を否定することも誤りである。
岩手信用生協では、「おまとめローン」を実行する際、その保証人の支払い能力ではなく、債務者の厚生への家族の協力を確保する趣旨で、多重債務者の家族に保証人になってもらうことが多い。家族の一員の経済的破綻に家族が協力することは、家計の厚生に不可欠のことなのである。これから予想される貸金業法43条の廃止によるグレーゾーン撤廃は、「要請書」指摘の問題の大半を解決することになるだろうし、「弁護士等専門家による早期の法的債務処理の選択」の機会を多くするこ とで成り立っていた弁護士、司法書士によるクレサラ法律産業も、その結果大いに縮小し、国民の専門家への報酬負担も軽減されることになる。
グレーゾーン廃止後に重要となる「おまとめローン」
グレーゾーンが廃止され消費者金融の金利が18%、利息制限法金利となった時、過払い利息金返還による調整という手段が無くなったとき、そのように成ったときにも存続が予想される個人の経済破綻は、では総て破産的清算によるべきということなのだろうか。破産的清算によらず、このような低金利のローン(岩手信用生協の「おまとめローン」金利は年利9%、楽天クレジットが年利7%)により既存高金利債務を借り換えることによって自己破産を避けるということは、極めて健全な選択と言えるのではないか。次回は、東京生活サポートの「おまとめローン」融資の斡旋につき若干の問題があるのでそれについて述べることにする。 |