貸金業法改正への私の基本的立場
今回の貸金業法の改正につき「わが国の個人消費者の信用市場について、その存在が国民の生活利益、福祉にとって『クレジットの価値は基本的には副作用をはるかに上回っている。そのことを前提とした上で副作用を出来るだけ小さくして行く方法を考えてゆく』」というのが私の基本的立場である。
弁護士会、司法書士会主流の立場
私の事務所におけるクレジットサラ金問題への取り組みについても従来から同様の立場をとって来た。しかし、弁護士会、司法書士会主流の立場は、「(個人相手の貸金業)クレジットの価値は、基本的には副作用のもたらす被害と危険の方が上回っているから、業者規制と金利規制の強化を通じて、消費者信用市場を縮小すべきである」という立場にたっている。
金利規制だけでは問題は解決しない
この立場に立つ人々は、消費者信用業者に対して、罰則による金利規制の強化と業者の広告宣伝の規制、TVメデイアからの排除を主張する。そして、この規制により、消費者信用市場問題のすべてが解決すると考えているかに見える。困窮に瀕した多重債務者という消費者達の強力な需要があるからこそ、ヤミ金が、あれほどの猛威をふるったわけで、その消費者信用への消費者の強力な需要の実態を分析もしないで、ただ行政による金利と刑罰規制のみによって、全金融取引の10%を占める巨大な消費者信用市場を制御出来ると考えるのはあまりにも楽観的に過ぎる。行政による金利規制と罰則による規制のみよって消費者信用市場を制御出来ると考えた結果、1983年に貸金業法が成立するのであるが、その後の20年間を見れば、消費者信用市場は、むしろ大発展し、あげくの果てにはヤミ金被害が全国に広がることになった。金利という観念的基準を机の上で考えるのは簡単だ。適正な金利が何%であるか、本来であれば、金利もお金の対価であるから、正常な競争市場において、需要と供給により均衡点が定まり、それが、その時々の客観的な適正な金利となる。実際、国際金融市場ではそのようにして適正な金利が定まっている。ところが、圧倒的に優勢な供給者と劣勢劣弱な需要者、すなわち消費者とにより構成される消費者信用市場においては、そもそも取引の公平が初めから構造的に維持できない。こ のような情報不均衡の市場においては、結局、正常な業者間競争も阻害されるのである。そのような消費者信用市場を対象に、その市場構造の歪みを是正しないままに、適正な金利を机の上で決定するというそのこと、それ自体が背理でしかない。読売ウイークリー4月9日号は「消費者金融『グレー金利』廃止へ、利用者には「吉」か「凶」か」という記事を掲載し、記者氏はその記事を「業界と借り手側の≪神学論争≫の行方は、まだ見えない」と締めくくっているが、金利論争は記者氏の指摘のとおり、実は存在しないものをめぐる神学論争なのだ。
真の消費者保護への道
消費者信用市場における真の消費者保護は、供給者と消費者の取引における不均衡を是正し、業者間競争を促進し、かつ生活困窮者への公的融資制度を充実させる、この三点につきる。市場取引の規制は、金利ではなく、免許制度、貸金業法の実効性ある運用によってこそ実現されるべきものと考える。今回の貸金業法改正の焦点、いわゆるグレーゾン金利の廃止については、クレサラ対協、全国クレサラ被害者連絡協議会、弁護士会、司法書士会と、その相手方である消費者金融業者団体、両者とも、貸金業法改正の基本方向としては、意見が一致しているようである。しかし、この議論にも妙な所、致命的とも言える欠陥がある。グレーゾーンをなくす方法には以下の三つの方法が考えられる。 出資法の上限刑罰金利29.2%を、利息制限法と同じ15〜20%とする。 出資法の刑罰金利のみとし利息制限法を廃止する。 出資法と利息制限法を一本化した新法を作る。 においては、それぞれにつき、上限金利をいくらに設定するかが問題となる。クレサラ対協、全国クレサラ被害者連絡協議会、弁護士会、司法書士会は、  のいずれの場合においても、上限金利を現行利息制限法以下にすることを求めている。実際、グレーゾーンを廃止しても、もしその結果改正され、あるいは新法の成立により変更された規制金利が、現行利息制限法の上限金利を上回ったとすれば、結果的には、クレサラ対協、全国クレサラ被害者連絡協議会、弁護士会、司法書士会等の当初の意図に反して、逆に、現行適法金利の上限を高くしてしまうことになる。しかし、出資法上限金利29.2%を15〜20%に引き下げることについて、国会において、過半数の賛成を得られるであろうか。改正の結果、現行利息制限法上限金利が事実上高くなったとすればその責任は誰が負うことになるのであろうか。 |