消費者信用市場の改革20 「生活サポート生活協同組合・東京」(6)

 
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「生活サポート生活協同組合・東京」(6)
 
 
 
 

「おまとめローン」最大の問題点

「おまとめローン」の最大の問題点は、多重債務者が過去に支払った利息制限法違反の業者の不当利得分の返還請求についてどうするかということにある。東京スター銀行の「おまとめローン」については、業者請求残高をそのまま合計したものにつき、年利12%で肩代わり融資するというもので、債務者が別途返還請求をしない限り不当利得分は貸金業者の勘定にそのまま残ることになる。「おまとめローン」の金融業者に、債務者に代わって不当利得の返還請求をするよう求めることは出来ないし、またそれを実行すれば違法となる。経験上、不当利得分の目安として年29%の金利で5年間取引を連続して行えば、債務の残高は0となり、それ以上の連続取引があれば過払い金が発生する。実務的には複数業者の請求額が400万円であった場合、これを利息制限法で再計算すれば、200万円以下となるケースはまれではないし、私の事務所で扱っている債務整理案件の20%には過払い金が発生している。過去に債務者が支払っている不当利得分は莫大なものとなるから、これを債務者が返還請求するかしないかは重大な問題である。業者の「おまとめローン」自体、例えば業者請求額400万円を肩代わりして年利12%で貸し付ける場合と、利制法引きなおし計算後の200万円を12%で貸し付ける場合とでは大きな開きが出てくる。とすれば「おまとめローン」業者に対しても、債務者から不当利得分の返還請求がなされる可能性もある。又、瑕疵ある債権への肩代わり融資については別の観点からの法律上の問題も生じるだろう。こうした問題が生じるのもグレーゾーン効果の後遺症といえる。

「生活サポート生活協同組合・東京」の
「利息制限法再計算業務」受託事業は弁護士法司法書士法上問題がある。

そこでこの問題を重視した「生活サポート生活協同組合・東京」は三つの生活相談事業の一つに「利息制限法再計算業務」をあげて、「債務整理を行う場合において、基本的に相談者が業者に対して支払い履歴の開示請求を行い、取り寄せた資料に基づき利息制限法の引きなおし計算業務を行う」(創立総会議案書36p)こととしている。そして「この資料は、相談者の債務整理の受任を協力する弁護士や司法書士への提供資料となる」ということだ。ところが、ここには重大な問題がある。その第一は「相談者が業者に対して支払い履歴の開示請求を行い」とあるが、相談者の業者への取引履歴開示請求に対し、業者が正確な履歴を開示してくるかという問題である。多大な不利益を被る業者に対し、正義、正直を期待することの方が間違っているのかも知れない。

多重債務者直接の取引履歴取り寄せには大きなリスクがある。

債権者は、取引履歴の開示請求にたいして紛失を理由に提出をこばんだり、一部開示でごまかそうとしたり、立証責任を主張してきたり、あの手この手で防衛策を打ってくるのが日常茶飯で、これに対抗して全開示を法廷で求めるのが認定司法書士や弁護士の仕事である。業者が正直に多重債務者の開示請求に応じていれば法廷はいらないが、不利益の受忍を業者に求めるのは無理である。正確な残債務額の確定が認定司法書士や弁護士の訴訟代理人としての主たる任務であるが、その最初の着手が債権者からの正確な取引履歴取り寄せの交渉である(この事務を債務整理の委任契約上の目的と切り離すことは出来ない)。債務者が取引と弁済に関する十分な証拠を所持していることは稀である。それは業者も承知で一部開示をしてくるのだが、債務者のわずかな証拠を秘して法廷で債権者にまずは自発的に取引履歴を全開示するよう求める。それにも応じなければ調査嘱託を申し立てたり文書提出命令の申し立てをしたりする。訴訟実績のある事務所であれば業者は正確な履歴を出した上で早期和解を求めてくる。訴訟実績の無い事務所であれば、履歴を一部開示した上で債務者の立証責任を追及したりして過払い金返還額を安く値切ろうとしたりする。従って消費者金融トラブルに強い認定司法書士や弁護士と、経験の少ない認定司法書士や弁護士とでは債務者の得る利益には雲泥の差が生じる。債務整理の現場はこのようなものであるから、「債務整理を行う場合において、基本的に相談者が業者に対して支払い履歴の開示請求を行い、取り寄せた資料に基づき利息制限法の引きなおし計算業務を行う。この資料は、相談者の債務整理を受任を協力する弁護士や司法書士への提供資料となる」とした事業案は、非現実的であるばかりか、相談者に不測の損害を与える結果にもなりかねない。

専門家の債務整理の
「その最初の着手が債権者よりの正確な取引履歴取り寄せの交渉である」

また、専門家の「その最初の着手が債権者よりの正確な取引履歴取り寄せの交渉である」とすれば、「この資料は、相談者の債務整理を受任を協力する弁護士や司法書士への提供資料となる」よりも、結局受任した認定司法書士や弁護士は依頼者との委任契約上の責任として、当然に、あらためて正確な資料を取り寄せ、それに基づき再計算することになる。結局二重手間となる。仮に規定にあるように、素人の集めた取引履歴をこれまた素人が再計算した提供資料に基づいて専門家が安直に債務整理業務を行えば、その結果にたいして専門家自身に、その受任義務違反や職業倫理が問われることになるだろう。「生活サポート生活協同組合・東京」は、議案書51pにおいて、利限法再計算業務受託について次のように解説している。「債務整理においてほとんどの場合、弁護士・司法書士が特に相談者に説明の無い まま再計算業務について代行し、詳しい業務報告書も作成せずに報酬に含めている現状がある・・このため、当方において債務整理の前に再計算をあらかじめ行っておき、弁護士・司法書士に資料提供を行うことは、相談者の費用負担の軽減になる。弁護士・司法書士との連携については、すでに複数の司法書士から協力を得て」いるという。組合員予定者としての私はこのような話を聞いていないし、この再計算事務受託については事務局員に計算自体の受託は違法ではないとは言った覚えがあるが、再計算受託業務の前提として、債務整理の入り口のもっとも重要な債権者との交渉と履歴取り寄せを自転車操業ですっかり疲弊した多重債務者に行わせるなどは聞いていないし、それはとんでもないことと言わなければならない。この事業計画の策定者自体、債務整理の手順や債務整理の現場を知らずに無邪気に作ったものであろうが、この利息再計算事業計画にはすでに述べたような重大問題があり、多重債務者と専門家との間にも委任契約上の問題、事務の責任の所在の問題等トラブルを引き起こす可能性をはらんでいる。新設信用生協の名誉と将来の発展のために至急この再計算事業につき再検討されることをのぞむ。さもないと提携問題が再浮上するかも知れない。 (利息制限法の再計算事務についてはいくつもの計算ソフトが市販されているが、この計算理論は最高裁判決の元本充当理論に基づいているものだがそのソフトも基本手続きを組み入れただけの単なる補助手段に過ぎない。計算についても、その前提として、法律判断が不可欠であり、例えば、一度完済した後3〜4年取引がなくその後取引が再開された場合に、これを通算して再計算するべきかどうかについては未だに下級審の判決は割れている状態にある。また法律上の悪意受益者に対する金利請求権についてもそれを民事法定利率で計算すべきか商事法定利率で計算すべきかについても下級審判決は割れている。再計算についてはこうした法律判断も不可欠となるのだが、事業計画案はこのようなことを一切考慮していないようだ)

 
 
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