自民党案の貸金業法改正案では、二点の重要な改正点がかけている。 雇用対策について関係官庁との連携策をとることと、 緊急生活資金に対する公的融資対策 の2点だ。
改正案ではグレーゾーン完全廃止まで3年の経過期間を予定しているが、この3年の間に と についても具体的な対策を検討して行くことが重要である。国民の多重債務状態からの救済を進めて行く過程では と の対策が必ず必要になって来る。多重債務化して生活が毎月の資金繰りに追われるようになると、生活再建への積極的な意欲も薄れて行ってしまう。生活更正を困難にしてしまう債務の多重化は、明らかに格差社会の広がりを加速する要因となっている。クレサラ多重債務化問題は、国民経済にとっても重大な問題なのである。
金利規制は市場取引のルールの問題だが、効果的な融資規制の問題は、行政による業者の行為規制の問題で、多重債務問題の解決にとってはこちらの方が余程重要なのである。もし融資規制をしなければ、例え金利を下げたところで現状を守ろうとする債務者の、「借りて返す」という問題先送りの結果生じる債務の多重化、借り入れ総額の増大という問題は解決しない。
の点で、これまでもっぱら金利問題のみを論じてきた弁護士会、司法書士会の論理は誤っていたと言える。融資規制を強化し実効性あるものにすれば、仮に金利規制によって個々の取引を規制しなくても債務者を多重債務化の危険から保護することは出来る。40年も前、消費者金融といえば質屋という時代、質屋の金利も月利9%〜10%と高かったが質草という制約があったために商人をのぞけば今日のような多重債務現象はなかった。しかもその頃の日本人は今よりずっと貧しかったのである。
さて、改正法成立後に始まる新しい消費者信用の時代を論ずる前に、まず今日における多重債務者の実態について認識しておく必要があるだろう。この実態については「全国信用情報センター連合会」の報告がある。多重債務者とは複数の消費者金融、クレジット会社、銀行などから借り入れをして返済が困難になっている人のことを言うが、「全国信用情報センター連合会」(全情連)の調べによると、2006年5月22日現在で、5社以上の金融業者から借金をしている多重債務者が229万人いることがわかった。ここ10年来、弁護士会、司法書士会は多重債務者が200万人いると言って来ていたが、実際はそれ以上の多重債務者がいたわけである。ということは、この国の消費者信用市場は、毎年200万人以上の多重債務 者を再生産していたわけだ。
このデータを公表した全情連は、消費者金融系の個人情報の信用情報機関で、データには、クレジットや銀行業界系の顧客情報は含まれていないから、そこからの借り入れも含めれば、多重債務者の実数は更に増えるものと思われる。5社以上の金融業者から借金をしている多重債務者といえば、私の事務所での相談者の標準パターンと言え、しかもこの層がもっとも多い。その借り入れ総額は250万円から300万円である。
特定調停制度も出来、認定司法書士制度も出来たが、それにも関わらず、多重債務者が増えるばかりという現状とこれまでの経過を見ると、弁護士会、司法書士会の取り組みは掛け声の割には成果が出ていない。多重債務者問題は、健全な国民経済の維持と発展にとって、又、格差社会の解消という点をとってみても、今やこの国の重大問題であるが、法的債務整理の独占権を国民から与えられている弁護士会司法書士会の取り組み方、発想、サービスの提供の仕方、これらについて、何か根本的に間違った点があるのではないかと私は考える。
全情連のデータによれば、消費者金融から、いわゆるサラ金から、借り入れている債務者の総数は1399万人、その借入残高は14兆1965億円で、借り入れ1社だけの債務者は598万人、43%であるから、半数以上の人が複数社から借り入れていることになる。他のデータによれば、消費者金融利用者の平均年収は300万円前後、これは実務での実際とも一致している。この平均年収300万円は格差社会問題でも登場してくる平均年収である。これを見ても格差社会の広がりと消費者金融問題に密接な関係があることが分かる。「論座」12月号の特集のタイトルのように、この国は今「多重債務ニッポン」なのである。 |