弁護士間、弁護士司法書士間に厳しい競争の結果
自己破産や個人再生、任意整理の手続きコストが確実に安くなり
国民に大きな利益をもたらしている
2005年11月12日、13日、岩手県花巻温泉で第25回の「全国クレサラ商工ローン被害者交流集会」が開かれた。会場はホテル千秋閣で初日、分科会終了後には懇親会が行われる。近くのホテル、旅館はどこも秋の観光客の予約で一杯、それで私と友人の司法書士Tは会場から車で20分も離れた温泉旅館に宿泊することになっていた。そのため残念ながら懇親会には参加出来なかった。私が全国クレサラ大会に参加するのは、埼玉で行われた大会以来4年ぶりのことであった。
1970年代に登場し成長して来た消費者金融市場は、今や日本経済の要素的存在となっている。その消費者金融市場は、経済のグローバル化、規制改革等、日本経済の構造変動を大きく反映しながら、一方において、社会的に見れば、この金融市場が供給側と需要者側の本質的な力における不均衡という取引特性を抱えているため、その結果、絶えず供給側と需要者側との間に対立と葛藤を生み出し、それを反映して深刻な社会的問題を常に生み出している。
埼玉クレサラ大会から岩手大会までの間、2001年秋から2005年秋までの間の4年間にも、大きな社会問題を惹き起こして来た。その最たるものはヤミキン問題であり、武富士問題であった。取引の自由を求める資金供給側と、契約当事者間の構造的不均衡を是正するための法規制の担い手、司法書士、弁護士側との間にも大きな変化があった。
その最大の変化は、認定司法書士制度施行にともなう認定司法書士の、それまでは弁護士の完全独占分野であった債務整理分野、法律サービス市場への新規参入であったろう。
この間の事情につき全国クレジット・サラ金問題対策協議会事務局長の木村達也弁護士は、2005年クレサラ白書の中で「《弁護士会の業務対策委員会
が司法書士のクレ・サラ事件への関与に神経を尖らせつつあった》ことは間違いない所であるが、多重債務問題が社会問題となり、弁護士会が十分対処しきれなかった中で、《クレサラ対協、クレサラ被連協運動に関与する司法書士が弁護士の協力や指導を得ながら被害者救済という形で関与することに弁護士会が正面から異議を述べることは出来なかった》」と述べている(2005白書16P)。
巨大な債務整理分野での法律サービス市場分野での弁護士の独占は弁護士に大きな利益をもたらして来たが、規制改革の一環である認定司法書士制度の導入は、この市場に弁護士間、弁護士司法書士間に厳しい競争をもたらすことになった。その結果、昨今の溢れんばかりのウェッブサイトに明らかなように、自己破産や個人再生、任意整理の手続きコストが確実に安くなり国民に大きな利益をもたらしている。
《クレサラ対協、クレサラ被連協運動に関与する司法書士が弁護士の協力や指導を得ながら被害者救済という形で関与すること》については、今日においても、関与していない司法書士や弁護士サイドから大衆団体を利用した新形態の業務独占ではないかという批判もある。
しかしながら、巨大な債務整理市場への、法律(国民の意思)による認可を受けての一般司法書士の参入とその実績の急速な増加は、サービス供給者側の《組織による独占思考》を徐々に無効化し始めている。
こうした環境変化のもとで今回の、25回クレサラ大会は、多重債務被害者の現状と救済を真正面に置いて、何よりも多重債務被害者を主役とした大会にしようとの関係者の意思と努力がうかがわれるものであった。今大会は、岩手県、岩手弁護士会、岩手県司法書士会、三者の後援を得て行われたが、その寄付者には団体としては上記3団体の他に岩手県消費者信用生活協同組合、東北労働金庫もその名を連ねている。
4年前の埼玉クレサラ大会よりも今回の岩手大会はイデオロギー色も薄く、「国民の切実な生活問題の解決が何よりも主役」との意識が広がっていたように思われる。岩手県は、行政の消費者相談センターや岩手県消費者信用生活協同組合と、岩手弁護士会と岩手司法書士会、それぞれの連携と協力が非常にうまく展開している珍しいところであるが、おそらくそうした背景もこの大会の成功をもたらした一因であるだろう。岩手県信用生協の発展に大きく貢献された石橋岩手県弁護士会副会長も本大会に岩手弁護士会を代表して来賓祝辞を述べられる他、シンポジウムのコーデイネーターとしても大いに活躍された。 |