借金苦に弱り果てた多重債務者に無法に対して正面から戦えと
正義を求めることが出来るのか
「ヤミ金」事件は、金融事件、経済事件というよりも、直接の詐欺、脅迫、暴行など刑法犯的要素が強い。それで弁護士会もヤミ金事件については厳しい態度で臨んでいる。犯罪との戦いという姿勢だ。
東京弁護士3会では「ヤミ金」対策統一原則を作り、ヤミ金からの借入金はたとえそれが元本だけであっても一切返還しないことを決めた。ヤミ金に対しては刑事告訴を含めた徹底追及が重要としているが、取り締まりに消極的な出先警察のヤミ金対応を考えれば正しい方針と思われる。
これに対し各地のヤミ金被害者の会や「夜明けの会」などには、消防署を事務局に差し向けるなど「ヤミ金」からの嫌がらせも頻繁にあるということである。4〜5年前、ヤミ金が横行し始めた頃には、私の事務所も、被害者に代わって所轄の警察署に電話をし捜査を促すなど、ヤミ金には真正面から対決していた。それで目黒川に浮かばせるなどの脅迫も受けたこともある。しかし、まもなくこの正面対決方針はとりやめた。
強硬方針をとると、被害当事者にヤミ金からの反動報復が向かうことが少なくなかったからである。ピザ50人前の注文とかこうした嫌がらせを引き起こすのである。それに司法書士の能力では弁護士に比べ、警察力を引き出して活用しようとしてもそこには限界もある。それで、交渉したヤミ金には、必ず完済証明を出させることで一件落着という方針に切り変えた。
また、50件60件のヤミ金被害者の場合でも、そのほとんどはヤミ金から借りては返すの繰り返しが多いので、実際には、最後に残る返済元本は僅かな場合が多い。つまり最後にババをつかんだ2〜3社のヤミ金からの借り入れ元本だけが残っていることが多い。他のヤミ金はほとんど過払い状態になっているから、司法書士が介入すれば大部分が手を引いてしまう。しかし、この場合、完済証明はどのような形のものでも必ずとっておくことが必要だ。ここを曖昧にしているとしばらくして請求が復活したり、いやがらせや報復があったりする。以来、私の事務所ではヤミ金であっても元本だけは返すようにしていた。無法な報復から債務者を保護する備えは私にはなかったし、借金苦に弱り果てた多重債務者に無法に対して正面から戦えと正義を求めることは私には出来なかった。
ヤミ金の元本は、不法原因給付で法律的には返還する必要のないものである。東京弁護士三会の基本原則では、たとえ元本でもヤミ金には一切返還してはいけないことになっている。法律扶助協会でも、私の持ち込み案件で、2社のヤミ金からの借り入れがあり、その元本を返済した自己破産債務者の援助申し込みが断られた。正義の実現にともなうリスクを自己破産者がおわされることになってしまったわけであるが、日本の法律救援の世界とはこんなものなのだろう。
年収1000万円の大企業、大マスコミ、官庁などの人たちの世界から見れば、ヤミ金の被害者加害者のおぞましき世界は、経済的弱者相互の傷つけあいに見えるだろう。昔しヤミ金との交渉にあたっていた私の事務員がノイローゼ状態になったことがあるが、確かにヤミ金の世界は一筋縄では行かない。
特定調停制度の利用は、今でもしつこいヤミ金との交渉に良く利用する。裁判所に行って問題を公平に解決しようとヤミ金に言えば、当然に裁判所に行きたくないから引き下がることになる。私も人助けと思って、大抵は報酬を踏み倒されることが多いにもかかわらずヤミ金問題に対処してきたが、正義を貫くためにはヤミ金問題は弁護士さんに任せたほうが良いのかも知れない。
たとえヤミ金でも3万円貸した3日後に介入通知が来て一切返済しない、それではヤミ金も、心情的にはドロボーと言いたくなるだろう。私はそういうことはしたくない。結論としていえば、ヤミ金問題は、高金利消費者多重債務問題が解決しない限り無くならない。しかしその被害を小さくすることはできる。高利貸し撲滅正義軍団の力を強化するまでのこともないのである。
ヤミ金に行く前に、行き詰まった消費者を救済できる、アクセスしやすく透明で安心できる相互救済ネットワークを作ることが、結局ヤミ金被害を減少させることになる。司法書士や弁護士など主役のネットワークではなく勤労市民主役のネットワークが必要だ。 |