金利を「法律」の力で下げるだけで
多重債務者問題は本当に解決するのだろうか
岩手県の花巻温泉で開かれた岩手弁護士会(会員59名)、岩手県司法書士会(会員180名)後援、全国クレジット・サラ金問題対策協議会、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会の主催による「第25回 全国クレサラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会IN岩手」は、昨年11月に終わった。
その後、11月19日には弁護士会館でシンポジウム「サラ金・クレジットの高金利を考える」が開かれた。司法書士会でも今年1月23日大阪で「金利シンポ〜高金利がもたらす人権侵害」と銘打った集会が開かれ、1月30日には「金利引き下げシンポジウム東北大集会とデモ行進」というイベントが「みやぎ青葉の会」と全国青年司法書士協議会の共催で行われた。
司法書士会も弁護士会も、多重債務者増大の原因が出資法の高金利にあるとしてその引き下げを求めている。消費者金融の高金利の弊害につき、司法書士の井口鈴子さんは、金融庁主催の第4回「貸金業制度等に関する懇談会」で、この弊害につき分かりやすく述べている。
まず高利の消費者金融を借り入れる人たちにとって「生活が苦しく、銀行から借りることも、社内融資もない人々にとって、金利の選択の余地はありません」と言い、さらに「サラ金から借りる人達の・・可処分所得は27万3241円」で、このような人達にとって、返済にまわせる金額はわずかしかなく、「月々4万5千円を返済にあてることは出来ません。しかし、仮に4社から200万円借りて、月々4万5千円ずつ返すならば、8%の銀行金利では3年11ヶ月で完済になります。18%では6年1ヶ月で完済となります・・これに対して、27%では、4万5千円を永遠に払い続けても終わりません。40年で2160万円払っても終わらないのです。」と報告しているが実際そのとおりである。
では金利を「法律」の力で下げれば問題は本当に解決するのだろうか。弁護士会や司法書士会はもっぱら「法律」の改正にのみ多重債務問題解決の方法を絞り込んでいるように思われる。法律サービスを職業とする人達だからそうなるのももっともだが、法律の力はそんなに万能なものなのだろうか。
井口さんも指摘する「生活が苦しく、銀行から借りることも、社内融資もない人々」、国民の20%の人達からの資金需要は強い。この資金需要があるからサラ金天国が長く続いたわけだ。「27%では、4万5千円を永遠に払い続けても終わりません。40年で2160万円払っても終わらない」という状態は、今のところ、自己破産、特定調停、個人民事再生、債務整理、不当利得返還といった手段で、終わらせているわけだが、それによる救済も十分とはいえない。その原因は、これらの制度の担い手たる、司法書士、弁護士の対応にもある。
それならば、だからこそ、出資法の金利を思い切って下げて、違反者をみんな逮捕すれば良いか、・・・とは言えないだろう。とすると、小口生活資金の強力な需要、これがサラ金天国ばかりでなくヤミ金地獄をも生み出したのだが、この庶民の小口生活資金の需要の構造の解明、これこそが多重債務問題解決の大前提であり、この構造の解明により、効果的な解決手段や制度を考えることこそが、まずは重要であると私は思う。
ではこのような小口生活資金需要の背景には一体何があるのだろうか。
《過剰与信の対象でもあり、ヤミ金地獄を生み出した、小口生活資金需要。》
これに対するしっかりとした対策を考えない限り、単なる法改正、出資法金利低減だけでは、街金のヤミ金化という皮肉な結果をもたらすだけということになるのではないか。法があってもなくっても、ブラックマネーと高利貸しは「生活が苦しく、銀行から借りることも、社内融資もない人々」、国民の20%の人達を狙い続ける。そして、家計管理技術に欠け、法律的知識とは無縁、もちろん単なる合理的思考にすら弱く、自制心や意思が弱く、家族関係に不調和で依存症の経済的自立性に欠けた人々を、高利貸しの甘い言葉が待っている。経済的自立性に欠けた人々・・それは他人事ではない、戦後教育が作り続けた人々でもあった。 |