さて、闇金問題で第二の論点は、その異常金利による過払い金の問題である。その過払い金を、不法原因給付や不当利得の法理をもって業者から取り戻すのが当然の正義と考えている人達が多い。債務者を代理して個別業者より過払い金返還請求をし、その返還を受けその中から成功報酬を得て債務者から感謝されている弁護士も少なくない。しかし、それには問題がないのか、私は、このことにつきかねてより疑問に思っていた。ここで、もう一度、モデルを見てみよう。
甲は1月1日、月利40%、年利480%でAより5万円借りた。
(法定利息 年20% 月利1,66% 月利830円)
甲は2月1日、7万円をAに返済(利息2万円、過払い金19170円)
甲は同日、その返済前に返済のためAと同条件でBより7万円を借りていた。
甲は3月1日、Bに98000円を返済(利息28000円、過払い金27170円)
甲は同日、その返済前に返済のため同条件でCより98000円を借りていた。
甲は4月1日、Cに137200円を返済する(利息39200円、過払い金38370円)
甲は同日、その返済前に返済のため同条件でDより137200円を借りる。
甲は5月1日、Dに返済できず逃亡した。
甲さんの得た実質的な利得は、最初の5万円で、それは葬式代だった。他に甲さんの得た実質的な利益はない。甲さんの逃亡で闇金Dの受けた損害は 137200円である。業者、A、B、Cが得た利益で、法定利息の合計は2490円、過払い利息金の合計は84710円 以上総合計87200円となる。これを甲の利得と合計すると137200円で、これは、Dの損害額と一致する。
Dからの返還請求を甲が不法原因給付を理由にその返還請求を拒んだとしても、甲A間、甲B間、甲C間の契約を無効として、不当利得として5万円、7万円、9万8千円を「甲」が請求出来るのだろうか。
もし出来れば、甲は最初に得た利得5万円のほかにDの犠牲において21万8千円を得ることが出来ることになる。過払い利息だけを利息制限法違反の不当利得として返還請求した場合でも、甲は、最初の5万円に加え、Aの得た19170円、Bの得た27170円、Cの得た38370円の合計84710円をDの犠牲において得ることになる。
これはおかしいではないか。甲が得た業者A,B,Cから得た金銭、それこそが不当利得なのではないか。
以上一連の取引きにおいて実質的に得られた利益は葬式代だけで、金銭は甲、A、B、C、D外には流れ出ていない。名目上の移転が行われているだけだ。ところが、この返還請求に弁護士、裁判所が関与した場合には、報酬、国家の手数料(印紙代)が、甲、A、B、C、D外に出て行くことになる。
哀れなジョーカーDは、葬式代を払い、A、B、Cは、甲がその費用を返還請求で得た金銭の中から払ったとすれば、弁護士の成功報酬、国家の手数料を払うことになる。結局、A、B、CはDに求償出来ないので、返還金を外部から調達して来ざるを得なくなり、甲と弁護士、裁判所は、その金を分け合うことになる。
甲、A、B、C、D間の137200円の経済はA、B、Cが外部より調達した返還金が加えられ経済成長することになる。その成長分で弁護士は報酬を得、国は税金を得ることになる。で、目出度し目出度しというわけには行かないだろう。 |