消費者信用生協の研究 13
業務独占資格者たちの価格競争回避体質が
悪の温床ともなっていたのではなかったのか?
規制緩和事後規制、この理論は多重債務問題の解決にも的中する。弁護士の法律事務独占権も統一価格という事前規制も、本来国民の利益保護のためのものであった。しかしその形骸化、特権化はすでに述べたように様々な弊害を一般国民消費者にもたらして来た。いまやウエッブサイトには弁護士、司法書士の価格広告が踊り始めているが、弁護士、司法書士の価格秘匿体質はまだまだ根深いものがある。最近、司法書士からこんな意見が寄せられた。
「勝瑞さん今日は。私はホームページも持っていないし、手続き費用について公開するつもりもありません。それは、債務者は千差万別で、保有資料も全くないものから、報酬を分割で決めても支払わないで連絡がつかなくなる者まで様々で、信頼を築くことが困難な人達が多いからです。また、登記などと違って、債務整理は定型的な側面よりも手続き的な側面が多く、その費やす労力も債務者によって異なります。だから報酬も一律に決めたくないのです。したがって着手金なども、面接して具体的内容等の事情を聞いた後に決めることにしています。私は相談料等はいただきません。債務者と着手金や解決金が折り合わなければ受託しないだけです。それに、訴訟までして過払い金をとるのと、7割程度で電話一本で解決するのとで労力が異なるのは明白です。慈善事業で債務整理をしているわけではないので、ホームページ等で報酬を公開されて、高い安いと評価されるのも困ってしまいます。」
手続き価格については、この司法書士の意見が弁護士を含めて、独占業務資格者達の大半の本音であろう。しかしながら、この司法書士は依頼人に対して圧倒的な強者であることに気がついていない。独立した個人が「平等な条件」で、申し込みと承諾をし、その対立する意思の合致により契約が成立するというのが近代市民法の示す正義であり民主制社会を支える私的自治の基本原理<でもあるが、この近代社会の原則を忘れている。
「公開するつもりもありません。」というにはいろいろ理由もあるだろうが、少なくとも消費者の「申し込み」に対して取引条件を明示する義務はあるだろう。義務と言うより、それでは有効な承諾を得られず意思表示を後に取り消されても文句は言えない。
「債務者は千差万別で、保有資料も全くないものから、報酬を分割で決めても支払わないで連絡がつかなくなる者まで様々で、信頼を築くことが困難な人達が多い」から一律の価格は設定できないというのは分かりやすいようだが、それは専門家の業務上の変動リスクを、依頼人に、一方的に、総て負担させているということになる。
「したがって着手金なども、面接して具体的内容等の事情を聞いた後に決めることにしています。」ということは、困窮した依頼人を面前に、一方的に供給者サイドがその場その場で恣意的に価格を決めるということになる。困窮した多重債務者を相手に、恣意的に金利を決める貸金業者とどこが違うのかということにもなりかねない。土俵に上がって平等な条件で相撲をとるのなら、強者は弱者に対しそれなりの配慮をすべきなのである。
消費者契約法や、労働基準法、貸金業法、利息制限法を知る法律家は、それら特別法の基礎に流れる公平公正な取引の基本原則を忘れてはならないだろう。「慈善事業で債務整理をしているわけではないので、ホームページ等で報酬を公開されて、高い安いと評価されるのも困ってしまいます。」と言われるが、私も慈善事業などするつもりはないが、ただ「高い安いという評価」の機会を、まず消費者国民に与えて、その消費者の自由な選択によって、自己の提供するサービスを評価してもらいたいのである。それが正義と考えている。
とかく自己の提供するサービスの内容やその価格、特に価格に対して、一般公衆をその顧客としながら、その匿名の多数の顧客に対して、司法書士や弁護士はその公開に消極的である。その理由は、契約上の供給側の優位性を維持しつつ、困窮した顧客を面前に、自己に有利な価格交渉をしたいと考えているからである。「第25回全国クレサラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会IN岩手」でも、依頼人がもっとも関心を持っている、弁護士や司法書士の手続き費用については全く議論されることはなかった。又、235ページに及ぶ立派な「クレサラ白書」もこの弁護士や司法書士の手続き費用については全く触れていないのである。国民一般大衆の本当の気持ちや心配を理解しているのか疑問に思う。
弁護士会や司法書士会に持ち込まれる紛議事件の大半は報酬に関するものである。とすると、弁護士会や司法書士会は広告に関し表現の品位などよりも、貸金業法に金利等取引条件の明示が規定されているように、弁護士、司法書士の広告には、その提供するサービスの価格または取引条件の明示を義務付けるようにするべきだろう。このような事前規制こそが必要なのではないか。未だに専門家によるボッタクリ被害と依頼者からの苦情の耐えない中、「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」を指導する宇都宮弁護士は弁護士会の広告部長だった人でもあるが、是非、そのような正義の広告基準の策定を弁護士会に働きかけてもらいたいものである。
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