消費者信用生協の研究 7
多重債務者の問題はすぐれて人の心の問題である
昨年11月、岩手で開催された全国クレサラ被害者交流集会での話題の焦点はいわゆる「ヤミ金」問題であった。2003年山口組五菱会系ヤミ金組織のトップ、梶山進が8月に逮捕され、11月に山口組に操作が入って以来、一時期、ヤミ金の活動が沈静化していたが、2004年頃から再びヤミ金の活動が活発化してきた。
私はヤミ金の分科会に参加した。分科会では有名な溝呂木弁護士が現状報告をし、他に各地の被害者からの体験レポートがあった。溝呂木弁護士の扱った事件の中には400社を超えるヤミ金からの借り入れによる被害者がいたという。私の扱った事件では100社が最高で、ヤミ金被害がピークに達した2002年から2003年には30件から60件のヤミ金借り入れの被害者が多かった。
最近はそのような多数借り入れは少なくなりサラ金への返済に詰まり、4〜5社のヤミ金からの借り入れで行き詰まるパターンが多い。新潟からのヤミ金被害者に、サラ金への返済が困った時点で、何故、地元役所の法律相談会や弁護士会、司法書士会に相談に行かなかったのかと質問した。そのような所が相談に応じてくれるとは知らなかったし、仮に知っていたとしても自分の恥をさらけ出したくないから行かなかっただろうという答えであった。
ヤミ金に借りてまで返済しようとする人達には小心だが不器用で生真面目な人が多い。それで、ふたを開けてみれば莫大な不当利得返還請求権の債権者となってしまう人が少なくない。ヤミ金というような現象が生じる背景には、勤労者の曖昧な権利意識や人目を気にするこの国独特のメンタリテイーもあるが、正義の実現が国家によって保障されているというこの国の建前とその実効性について信用できないという国民側の不信感がある。
振り込め詐欺や押し貸し事件の犯人達の多くは元ヤミ金の従業員や経営者達であるが、結局、彼らはこのような国民保護の手薄さと国民の司法的な権利主張手続きに関する無知に着眼しているのである。法治国家としての国民の法的権利保護の担い手は国家機関としては裁判所であるが、民間での担い手は弁護士や司法書士に他ならない。しかし、この民間の職業的保護機関である弁護士制度や司法書士制度が十分に機能しているかといえば、そうは決して言えないだろう。200万を超える多重債務被害者問題を解決し国民経済の健全化を図るのに、そのための仕事に従事する弁護士や司法書士は、それら制度の内部においては少数派である。全員それぞれが権限を持ちながら、何故、多重債務被害者救済の弁護士や司法書士が、少数派でしかないのか問題である。
ヤミ金問題を含め多重債務者の問題はすぐれて人の心の問題である。その心に問題があると言えば、実はこの問題の法的解決に携わるべき司法書士、弁護士の心にも問題があるのではないかと私は思う。
多重債務者と接触する資格者というものは、数%合格という選抜試験の関門を潜り抜けた一種の勝ち組の人達ではないか。資格者の中には、その尊大さに自覚症状がなく、たいした社会経験もないのに、債権者の追及に疲れ果てた債務者を前にして人生哲学を押し付けるような吾人も少なくない。日本の正義の担い手たちがこうしたことに気づき、業務スタイルを変えない限り、日本の法的正義の環境は変わらず、そこに付け込むヤミ金や振り込め詐欺、俺オレ詐欺や押し貸し事件など、なくなることはないだろう。
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