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3月30日(2008年) サンデープロジェクトの議論

毎週日曜日、10チャンネルの田原総一郎さん司会のサンデープロジェクトを楽しみにしている人たちは多いだろう。今は便利なもので番組予約しておけるから休みで外出していてもあとでビールを飲みながら、場合によれば繰り返し細かく見ることも出来るし、DVDに保存して仲間内でビデオを見ながら議論することも出来る。時事放談、報道2001、テレビタックルなどは番組予約の定番だ。その人気番組で年間4000億円に上る消費者金融業者への過払い金返還請求の問題が取り上げられた。わが国消費者信用市場の現在への一個の問題提起として、3月30日のサンデープロジェクトの議論の概要を省みてみよう。

 

グレーゾーン金利廃止は日本経済に悪影響を及ぼさないか

2010年6月までに年20%を超える金利は出資法の規制対象となるが、一昨年、平成18年1月最高裁判決が出て以来、消費者の消費者金融に対する、利息制限法違反の利息請求に対する弁済金の返還請求、いわゆる過払い金返還請求が激増し、一部上場の消費者金融クレデイアが倒産するなど中小のサラ金倒産があいつぎ、これはわが国のサブプライムローン問題に発展しかねない重大問題ではないかという、司会者の問題提起から議論が始まった。

これに対し、全国クレサラ問題対策協議会の木村達也弁護士は、金利規制強化の必要性について、現在、サラ金の利用者は全国に1400万人おり、これは乳児を含めた日本人の8.5人に一人が高利サラ金を利用していることになる。その一人あたり借入残高は145万円となり、5社以上残高200万円以上の借入のある人は230万人で、これは大阪市の人口に匹敵する。この結果2006年の自殺者は7000人、自己破産者は2005年度で18万4000人になるとわが国消費者信用市場の実情について説明された。

紹介された実情はそのとおりであると思われる。しかし消費者金融市場は木村弁護士が指摘される以上に国民生活に広がっているのではなかろうか。サラ金の利用者8.5人に一人と言えば驚きだが、クレジットカードを持っていない人は少ないのではなかろうか。クレジットカードの大半にはキャッシング機能が組み込まれている。とすると日本人成人の大半はクレサラの利用者ということになる。

キャッシング機能を利用するかしないかは別として、例えば、JRのビューカードもクレサラカードだし、航空運賃割引、専用喫茶店利用権、ポイント付のANAカードやJALカード、車のローンカードもクレサラカードなのだ。このクレサラカードについて事務員に聞いてみると、「私の友達にツタヤのカードに入った人がいてキャッシング利用すると年会費ただになるといわれキャッシングにはまっちゃった人がいます」ということだった。ツタヤはアプラスと提携しているのである。その人が多重債務化したかは知らないが消費者信用問題はそれほど単純なものではないのである。信用経済は、豊かとなったこの国の消費経済に今やぴったりと張り付いてしまっているのである。

 

金利規制強化反対派の意見は?

金利規制に反対する立場から、憲法学者の小林節慶応大学教授と経済アナリストで大東文化大学講師の植木栄介氏が発言された。以下発言の要旨を紹介する(大意で実際の発言とは異なる)。

まず小林教授は、小規模の消費者金融業者は年利20%以下の金利、すなわち20%の収益では大手はともかく、とても無担保での貸金業は営業できない。これを利用している人たちもいるのでそうした人たちへの融資の道を閉ざすことになる。金利で市場を一律に規制すればその副作用が大きいとも言われる。

エコノミストの植木氏は、消費者保護は社会政策としては当然に必要で、多重債務者の増大を容認するわけではない。しかし、金利で取引市場を規制すれば、例えば2006年1月の最高裁判決までは、大手7社の消費者ローンの成約率は55%あったのに、判決以来の過払い金返還請求の急増で2007年12月には34%に減少した。その影響で、今日に至るまで中小の貸金業者の倒産、廃業が相次いでいる。2006年までは年金利20~30%で需給バランスがとれていたのではないか。このようなわが国の消費者金融市場への規制強化については、規制緩和に逆行するものとして海外からの批判もあると述べられた。

 これに対し、木村弁護士は、小規模事業者には、銀行、信用金庫、信用組合、保証協会付の制度融資、国民金融公庫など多様な借入手段があるのであって、事業者が違法高金利街金業者から借り入れなければならないようでは、廃業転業を考えた方がむしろ健全だ。違法街金からの借入で重大問題は、彼らが親戚などから連帯保証人をとることで、経営不振による借入の返済責任が、家族全員、親戚などに広がってゆき収拾がつかなくなることが珍しくない。金利20%以下に規制されて悪徳高利貸しがつぶれても仕方ないじゃないですか。

小林教授は、貸す側にしろ、借りる側にしろ、木村弁護士の意見では、事業家の気持ちを無視している。リスクをとるのは事業家なので、そのリスクをとって取引するのに余計なお世話ではないかと反論。確かに利息制限法違反ではあるが貸金業法の43条で29.2%までの合法ゾーンが認められたのではないかと指摘。

これにつき木村弁護士は、刑罰金利が29,2%にまで至った歴史を述べる。1983年年までは刑罰金利は109,5%だった。(1970年代中頃からアメリカの無担保消費者ローンの盛況の影響を受けてタケフジ、アイフル、アコムなどいわゆるサラリーマン金融が急成長し、取立ての厳しさや家族崩壊が社会問題となった。映画「夜逃げや本舗」が話題になったのもこの頃のことだ)このサラ金の社会問題化で、1983年に刑罰金利は73%に引き下げられる。1986年には54,75%となり(花伝社の「地獄からの生還」や自己破産本が書店を飾るようになる)1991年には40,004%となり、零細事業者向け商工ローンが社会問題となった。(「難波金融道」がベストセラーとなり山口組系ヤミ金が全国的に登場。こうした問題を受けて)2000年に刑罰金利は29,2%に更に引き下げられ今日に至ったと今回の貸金業法改正に至るまでの経過を説明した。

このあと、小林教授の憲法論からする反論があるのであるが、1年半後に迫るグレーゾーン廃止問題はそれほど単純な問題ではない。グレーゾーン廃止とは、出資法制限金利、つまり刑罰金利の適用を年利20%超とするものであり、この20%超の年利を取得した者には刑罰を科せられるということである。消費者保護のためとは言え変幻極まりない取引市場への規制に刑罰をもってすることが好ましいかどうかはこれ自体検討する必要はある。

暴利行為は刑罰をもって処罰し、利息制限法違反については民事的救済をもって対応する、つまりこれまでのグレーゾーン金利と呼ばれる領域を私的自治にゆだねるという在り方も必ずしも非合理とは言えないのである。