コンテンツ

広がり始めた多重債務問題解決の新しい担い手達

全国のクレジット・サラ金被害者の会と、これを支援する弁護士・司法書士からなる「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」による活動は、多重債務者への救済運動として今も粘り強く続けられている。しかしその運動にも関わらず、一般国民の支持の広がりを面的に得るまでには至っていないようにみえる。

その理由の一つとして「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」自体が、入会に会員二名の推薦を要件とするなど、一般の弁護士司法書士にとっては必ずしも開かれた団体であるとは言えないということと、クレサラ被害者の会の持つ独特の活動スタイルや哲学に反発する多重債務者の方たちも少なくはないからだ。「被害者」という位置づけ自体に屈辱感を感じる多重債務者の方達も多い。

とすると、「今年3月時点で、1年前と比べて多重債務者を31.1%減の117万7000人に減少」させたものは一体何であったのだろうか。年間4000億円という不当利得返還請求を可能とさせたその担い手は一体誰だったのであろうか。どんな団体だったのであろうか。

実は、それはインターネットなどを通して活発に広告を展開し多重債務者にサービスの提供を呼びかけて来た全国多数の、普通の弁護士、司法書士達に他ならない。特にこの数年来、多重債務問題を扱う弁護士や司法書士が急増しているがその影響力の拡大には驚かされる。交通機関や各種メデイアにおける弁護士や司法書士のクレサラ広告は今では少しも珍しいものではなくなった。最近になりやっと提供するサービスの価格を明示する事務所も増え、依頼者は価格やサービスの内容を選択出来るようになりつつある。これからは、価格競争もサービスの質の競争もさらに本格化して行くことであろう。

弁護士先生、司法書士先生の事務所の敷居はとっくに低くなっていたのだ。価格競争、広告自由化、認定司法書士制度導入、それはまさに小泉規制改革のもたらしたものといえるが、これにより得られた結果、成果を、どう評価すれば良いのだろうか。改革により国民の得た利益、損害を回復した利益は4000億円と大きかった。

改正貸金業法が目的とする多重債務者ゼロの健全な消費生活、消費市場の実現、これは少数先鋭な職業的運動家や政治的活動家達だけでは決して実現できるものではない。公共団体の積極的な消費者への援助と専門家との連携、協力はもちろんのことであるが、まずは自ら普通の経済生活を営む多数の弁護士や司法書士が、多重債務問題の解決を日常の仕事にすることが出来て初めて実現出来たことなのである。

ヤミ金バスター、100人の従業員を抱える若き石丸弁護士は今やモーニングショーのレギュラーコメンテイターになった。クレサラの世界においても、職業的左翼指導者に指導された伝統的な大衆運動やイデオロギーの時代は去り、市民の目線で仕事をして行く橋本弁護士や石丸弁護士のような、30代40代の人達の時代が来たのだ。

自殺者や夜逃げを多く出した1980年代、1990年代の多重債務者救済の主役は、宇都宮弁護士、木村弁護士指導するクレ対協と革新系団体が率いる被害者の会であった。そこに帰属していた司法書士は数える程であった。この時代の弁護士報酬つまりサービス価格は、弁護士会の規制価格であったから、弁護士法違反となるので減額も出来ず、結局、自己破産するにも高い弁護士報酬を払えずに夜逃げする多重債務者も珍しくなかった。今日では一件20~30万円代で自己破産を受任する弁護士も少なくないのである。当時と比べれば実に隔世の感があるではないか。

さて2008年、5月17日、東京平河町の砂防会館で、東京司法書士会の定時総会が開催された。執行部への質疑応答の際、支部代議員会員から会の多重債務電話相談や司法書士会無料相談が減少しているのではないかという質問があった。これだけ多重債務問題や過払い金返還請求問題が社会的問題となっている時に信じられないことだが、応答に立った常任理事の話では、司法書士会ばかりでなく弁護士会においても相談件数は減少していると言うことだった。

広告価格競争禁止の独占時代には、強制会が事件を集め、それを会員に配当するという仕組みが機能していたのだがそれが機能しなくなりつつあるのかも知れない。多重債務者はわざわざ四谷の司法書士会館や霞ヶ関の弁護士会館に行かなくとも、インターネットや広告で、もよりの司法書士や弁護士を選んで直接相談に行っているのだろう。開かれた市場で多数の弁護士や司法書士が、直接、顧客との出会いを果たしているのである。その結果が多重債務者3割減と4000億円の不当利得金の回収だった。これを誰が喜んでいるのか。多重債務に追い込まれたその人達であろう。