平成クレサラ興亡の歴史

平成クレサラ(消費者金融)興亡の歴史 

 

最高裁の記録によれば、新貸金業法の規制で、減少していた個人の自己破産が、平成16年から増加に転じ、2019には7万3095件と二年連続で7万件を超えた。コロナ感染でオリンピック延期、中止が論じられる中、インバウンド需要の激減で中小企業とそこに勤める人たちの経済的窮迫が懸念されている。2017年の個人の自己破産申立件数は、前年比6・4%増の6万8791件で、2年連続で増えた。2016年から増え始めているが、ここ数年で貸し出しが急増した銀行カードローンの影響が大きいのではないかともいわれている。

 

自己破産の件数は2003年(平成15年)の約24万件をピークに減り続けて来たが最近になって再び増加し始めたかのように見える。しかし、反面、債務整理が増えているという話は聞いたことはない。かってサラ金10社からの借入も不思議では無かった多重債務者の時代は去った。多重債務者と自己破産が社会問題となって、2006年(平成18年)に改正貸金業法が成立し、2010年(平成22年)完全施行され、利息制限法の上限(20%)を超える「グレーゾーン金利」も撤廃された。そして登録貸金業者は、消費者に対して、その年収の3分の1超の貸し出しが禁止された。

 

しかし、その一方で、貸金業法の規制の対象とならない大手都市銀行が消費者金融を直接展開し始め、その結果、銀行カードローンの貸し出し残高が急増し、2017年(平成29年)末の貸出残高は前年比5・7%増の5兆7460億円となった。制が無いので、消費者に年収を上回るお金を貸すこともあり、それが最近の自己破産増加の原因ではないかという評論家もいる。

 

かってクレサラの消費者向け貸付がピークに達した時には、貸付残高70兆円と国家予算並みの残高を誇っていた時のことを思い出す。それに比べると、消費者金融の世界は、今は何と穏やかなものかと感慨無量というところか・・。

 

自己破産を避けるために、70回、100回分割返済の無理な債務整理をし、5年も、場合によれば10年近く、毎月の返済で人生を拘束される人たちも珍しくはなかった。不動産バブルの裏にはクレサラバブルもあったのだ。

 

今その10年前、株価7000円の頃(2021年現在 株価2万二千円)を思い出してみよう。消費者金融の世界は変わった。制度も変わった。だから、もう二度とあの多重債務者時代、自己破産列島の時代はやってこないだろう。そういえば、あの頃、弁護士会の元会長、宇都宮弁護士が、市中銀行が消費者に無担保融資をすべきではないかと言っていたことを思い出す。今、市中銀行は消費者金融が稼ぎの種となっている。しかし、デフレ三十年の今、深刻な経済危機に襲われるのではないか、再び消費者無担保金融債務者破綻の自己破産時代が再来するのではないかとささやかれ始めた。

 

そこで今、不動産バブル崩壊、消費者金融崩壊の、あの頃を振り返ってみることにしよう平成の時代は、消費者金融栄枯盛衰の時代でもあった。この10年余、いつもと同じように多くの人たちが登場し、そして消え、今消えつつある人たちもいる。

 

クレサラ世界の大激変

 

2006年(平成18年)12月のことだった。改正貸金業法が成立し、実施第一段階として翌2007年、1月、ヤミ金融に対する規制強化(懲役刑を5年から10年に引き上げるなど)が実施され、12月には過剰貸付への抑制や取立て行為への規制を強化するなどの第2段階が実施された。改正貸金業法の施行が本格的段階に入った。

 

8ヶ月で多重債務者40万人減

消費者金融を利用している人は全国で1400万人いたとされる。その内多重債務者は200万人を超え、その平均借入額は約230万円にのぼると言われていた。これに対し、金融庁が2006年12月4日発表では、5件以上の借り入れがある多重債務者数は集計を始めた昨年2月末の177万人が、10月末には139万人となり、わずか8ヶ月で多重債務者は40万人も減少した。金額ベースでは無担保・無保証の借り入れ残高は、2月末には13兆8119万円に上っていたが、10月末では12兆7564億円となり約1兆円減少したことになる。又この内の90%が利息制限法を超える年利20%以上の貸付であった。

 

貸金業者1万社割れ 法改正で新規参入激減

2008年、3月7日の金融庁発表によれば、全国の貸し金業者数は2008年1月末時点で9819社、1983年の貸金業規正法施行以来、初めて1万社を割った。改正貸金業法成立直後の一年前の12月時点に比べると2013社も減少し中小業者の廃業が相次いだ。

私が、《弁護士いらずの消費者債務更生・自己破産免責完全ガイド「『超』済出発」》という自己破産本を出版した20年前、1998年時点では、3万1414社あっのだから隔世の感がある。業者数はバブル時代の1986年がピークで4万5千社を超え、2005年には2万社を割りそのころから顕著に減少し始めた。改正法の施行された2008年の1月にはアイフルが約2700の店舗を1200店に減らす大リストラを実行し、7月にはプロミスと業界5位の三洋信販とが経営統合、そして9月にはクレデイアが過払い金返還請求に耐えられず倒産した。2年後の2010年には改正法が完全施行となって上限金利は年15~20%となりわが国の消費者信用市場の姿は一変した。

 

1998年から2008年までの10年間

(現在2020年から見れば12年前の10年間  10年後の2020年の今 過払い金請求権の時効消滅が始まった)

 

私にとってあの10年、ふりかえる暇もない10年間だった。しかし今になってみれば懐かしさを感じるばかりである。それはクレサラとヤミ金との闘いの10年間でもあった。反面、司法書士業界の独占カルテル体質との闘いの10年でもあった。債務整理を本格的に始めたのは、《弁護士要らずの消費者債務更生・自己破産免責完全ガイド「『超』済出発」》(売れたのは7000冊で、宇都宮先生の足元にも及ばないが、編集者の話では3割位は同業司法書士の入門書として売れたらしい)という自己破産本を出版したのは1998年のことであるが、この本を書いたのも弁護士70万円、司法書士40万円という当時の自己破産費用のあまりの高さに怒りを覚えたからだった。

 

その頃は、司法書士も弁護士も、広告や価格競争が禁止されていた(この広告価格競争の禁止は宇都宮元弁護士会会長は今でも主張されている。国民の皆さんはこの禁止、つまり専門職間の競争禁止について、どう思われるだろうかこの事が消費者に、特に供給側(資格者)からの情報アクセスから遠ざけられていた多重債務者の皆さんたちに、どれほど大きな損害を与えていたかは、今日、振り返ってみれば一目瞭然である。10年後の今、独占状態の過去に戻って欲しいと願う弁護士、司法書士が、実は業界の本音、多数派となっている。弁護士増員、受験者の3割が司法試験に合格するとなった今、認定司法書士制度すら廃止すべきとする弁護士の本音がしばしば聞かれるようになっている。

 

多重債務者8ヶ月で40万人減少の原因にグレーゾーン金利の過払い金返還請求、訴訟の激増が指摘されているが、この裁判上、裁判外での請求を、実質的に支えているのは司法書士や弁護士である。特に弁護士とは違って、全国的に均在する認定司法書士活躍の貢献は大きかった。このことを一番良く知っているのはマスコミではなく相手方の貸金業者なのであった。

 

認定司法書士以前には代書権しかなかった司法書士の私は、もっぱら自己破産の代書をやっていた。その後特定調停制度が議員立法で出来、早速これを債務整理に活用した。ついで法律扶助協会が発足する。これで10万円の自己破産が可能になった。その頃、ヤミ金被害が全国に広がり始める。まだ代書権しかなかった私は、特定調停制度を活用してヤミ金被害者を救済した。そしてついに司法制度改革で、司法書士に簡易裁判所の訴訟代理権が与えられる。私は直ちに過払い金返還請求訴訟に着手した。そして貸金業法改正を機に、やっとこの国の消費者信用市場の異常さが是正されて行くことになる。

 

私はもともと貸金業者撲滅という立場には立っていなかった。圧倒的に強者である貸金業者と、弱者である消費者との信用取引を公平公正にするべきであり、それが正義なのであるからその違反については法の力で是正すべきであり、それこそが法律職の使命と考えていた。

 

改正法施行初年度の多重債務者40万人減少という大成果の背景には、最高裁判所における判例の積み重ね、法制度の拡充、司法制度改革による認定司法書士制度の登場、独占禁止法による弁護士、司法書士制度への競争政策の導入、インターネットによる社会経済の情報化の飛躍的進展があった。

 

弁護士の法律独占に風穴をあけた規制改革の具体的な最大の成果がこの多重債務者40万人減少ということではなかろうか。司法制度改革、規制改革がなければ、私もホームロイヤーズも、業界話題のアデイーレの石丸弁護士も存在していなかったことになる。

 

改正貸金業法第二弾の内容

借入限度額

2007年12月19日、改正貸金業法は、その第二弾として多重債務に陥る消費者を減らすために、貸金業者の過剰融資についてこれを規制することにした具体策は、「日本貸金業協会」の自主ルールとして実施された。

例えば、毎月の返済額が、総額で月収の3分の1を超えるような融資は受けられなくなる。月収30万円の人であれば月の返済額が10万円を超えるような額は借りることが出来なくなる。約定の返済期間が1年であれば、月収30万円、年収360万円の人は消費者金融からの借り入れは総額120万円前後に制限されるということだ。2社からでも3社からでも総額120万円前後が借入の限度額となる。しかし実際の借入れ期間は3~5年ということもあるだろうし、借り換えやリボ払いに関する借入リスクが消え去るわけではない。月10万円の返済額がほとんど利息の支払いなどということになっては困る。

 

審査の厳格化

これまでは窓口なら免許証だけで簡単に借り入れることが出来たし、無人貸出機からも借入が出来た。ATM、無人貸出機がなくなるのか不明ではあるが、少なくともこれからは収入支出の状況や家族構成、勤務先などが詳しく問われることになる。50万円以上の借入には源泉徴収票など年収を証明する書類の提示が必要となる。又他社からの借入も細かくチェックされ、そのために業者間の信用情報交換システムの充実が図られた。

 

返済額返済期日の通知

借入が複数化、多重債務化すると毎月の返済に追われて全体の借入額や返済額がわからなくなってしまうのが普通だ。このために貸金業者は融資のたびに返済額や返済期日を債務者に通知することになった。以上は「日本貸金業協会」の自主ルールとして実施されるものであるが違反業者は協会を除名される。金融庁はまずは業者団体の自治的規制を介して消費者保護を図ることにした。

 

取立て行為の規制強化

業者が3人以上でする取立て行為を禁止する他、親族の冠婚葬祭や年末年始、入院時などの際の取立てを禁止する。電話での督促は1日3回以内、メールや文書で催促したあとは、3日以内に再督促することを禁止する。

 以上の改正貸金業法の違反については、従来の業務停止か登録抹消の処分に加えて、金融庁の取り締まり権限に、さらに違反に対する「業務改善命令」処分が加えられ、業者の違反に対し迅速に処分が下せるようにして、改正法の実効性を確保するようにした。これにより依頼消費者の苦情に対しては我々も対処しやすくなったわけだ。

法律としての上限金利(刑罰金利)の引き下げと貸し出し総額年収3分の1規制は、2010年6月までに施行されたが、大手業者は新規融資申し込み者については現在では年20%以下にして貸し付けている。

さて、貸金業法の改正は消費者信用市場に大激震を与え、2008年の利息制限法違反を理由とする不当利得返還請求額は4000億円を超えることとなった。この返還請求のために大手ではクレデイア以下中堅貸し金業者の倒産が相次いだ。そのようななかで消費者信用市場への規制強化が行き過ぎであるとのエコノミスト側からの批判も出た。消費者向け無担保ローンの弊害を認めつつも、市場取引を利息制限法という法律のみによって規制することが良いのか、他の方法によっても弊害を是正することが出来るのではないか。利息制限法だけの規制では弁護士の収益を増やすだけではないのか(2008年3月30日 10チャンネル サンデープロジェクト 司会田原総一郎)などと指摘もされた。当時の議論を見てみよう。

 

3月30日(2008年) サンデープロジェクトの議論

毎週日曜日、10チャンネルの田原総一郎さん司会のサンデープロジェクトが当時人気であったから、番組を楽しみにしていた人たちも多かっただろう。時事放談、報道2001、テレビタックルなどは番組予約の定番だ。その人気番組で年間4000億円に上る消費者金融業者への過払い金返還請求の問題が取り上げられた。わが国消費者信用市場への一個の問題提起として、サンデープロジェクトの議論の概要を省みてみよう。

 

グレーゾーン金利廃止は日本経済に悪影響を及ぼさないか

2010年6月までに年20%を超える金利は出資法の規制対象となるが、一昨年、平成18年1月最高裁判決が出て以来、消費者の消費者金融に対する、利息制限法違反の利息請求に対する弁済金の返還請求、いわゆる過払い金返還請求が激増し、一部上場の消費者金融クレデイアが倒産するなど中小のサラ金倒産があいつぎ、これはわが国のサブプライムローン問題に発展しかねない重大問題ではないかという、司会者の問題提起から議論が始まった。

これに対し、全国クレサラ問題対策協議会の木村達也弁護士は、金利規制強化の必要性について、現在、サラ金の利用者は全国に1400万人おり、これは乳児を含めた日本人の8.5人に一人が高利サラ金を利用していることになる。その一人あたり借入残高は145万円となり、5社以上残高200万円以上の借入のある人は230万人で、これは大阪市の人口に匹敵する。この結果2006年の自殺者は7000人、自己破産者は2005年度で18万4000人になるとわが国消費者信用市場の実情について説明された。

紹介された実情はそのとおりであると思われる。しかし消費者金融市場は木村弁護士が指摘される以上に国民生活に広がっているのではなかろうか。サラ金の利用者8.5人に一人と言えば驚きだが、クレジットカードを持っていない人は少ないのではなかろうか。クレジットカードの大半にはキャッシング機能が組み込まれている。とすると日本人成人の大半はクレサラの利用者ということになる。

キャッシング機能を利用するかしないかは別として、例えば、JRのビューカードもクレサラカードだし、航空運賃割引、専用喫茶店利用権、ポイント付のANAカードやJALカード、車のローンカードもクレサラカードなのだ。このクレサラカードについて事務員に聞いてみると、「私の友達にツタヤのカードに入った人がいてキャッシング利用すると年会費ただになるといわれキャッシングにはまっちゃった人がいます」ということだった。ツタヤはアプラスと提携しているのである。その人が多重債務化したかは知らないが消費者信用問題はそれほど単純なものではないのである。信用経済は、豊かとなったこの国の消費経済に今やぴったりと張り付いてしまっているのである。

 

金利規制強化反対派の意見は?

金利規制に反対する立場から、憲法学者の小林節慶応大学教授と経済アナリストで大東文化大学講師の植木栄介氏が発言された。以下発言の要旨を紹介する(大意で実際の発言とは異なる)。

まず小林教授は、小規模の消費者金融業者は年利20%以下の金利、すなわち20%の収益では大手はともかく、とても無担保での貸金業は営業できない。これを利用している人たちもいるのでそうした人たちへの融資の道を閉ざすことになる。金利で市場を一律に規制すればその副作用が大きいとも言われる。

エコノミストの植木氏は、消費者保護は社会政策としては当然に必要で、多重債務者の増大を容認するわけではない。しかし、金利で取引市場を規制すれば、例えば2006年1月の最高裁判決までは、大手7社の消費者ローンの成約率は55%あったのに、判決以来の過払い金返還請求の急増で2007年12月には34%に減少した。その影響で、今日に至るまで中小の貸金業者の倒産、廃業が相次いでいる。2006年までは年金利20~30%で需給バランスがとれていたのではないか。このようなわが国の消費者金融市場への規制強化については、規制緩和に逆行するものとして海外からの批判もあると述べられた。

 これに対し、木村弁護士は、小規模事業者には、銀行、信用金庫、信用組合、保証協会付の制度融資、国民金融公庫など多様な借入手段があるのであって、事業者が違法高金利街金業者から借り入れなければならないようでは、廃業転業を考えた方がむしろ健全だ。違法街金からの借入での重大問題は、彼らが親戚などから連帯保証人をとることで、経営不振による借入の返済責任が、家族全員、親戚などに広がってゆき収拾がつかなくなることが珍しくない。金利20%以下に規制されて悪徳高利貸しがつぶれても仕方ないじゃないですか。

小林教授は、貸す側にしろ、借りる側にしろ、木村弁護士の意見では、事業家の気持ちを無視している。リスクをとるのは事業家なので、そのリスクをとって取引するのに余計なお世話ではないかと反論。確かに利息制限法違反ではあるが貸金業法の43条で29.2%までの合法ゾーンが認められたのではないかと指摘。

これにつき木村弁護士は、刑罰金利が29,2%にまで至った歴史を述べる。1983年年までは刑罰金利は109,5%だった。1970年代中頃からアメリカの無担保消費者ローンの盛況の影響を受けてタケフジ、アイフル、アコムなどいわゆるサラリーマン金融が急成長し、取立ての厳しさや家族崩壊が社会問題となった。映画「夜逃げや本舗」が話題になったのもこの頃のことだ)このサラ金の社会問題化で、1983年に刑罰金利は73%に引き下げられる。1986年には54,75%となり(花伝社の「地獄からの生還」や宇都宮弁護士の自己破産本が書店を飾るようになる)1991年には40,004%となり、零細事業者向け商工ローンが社会問題となった。(「難波金融道」がベストセラーとなり山口組系ヤミ金が全国的に登場。こうした問題を受けて)2000年に刑罰金利は29,2%に更に引き下げられ今日に至ったと今回の貸金業法改正に至るまでの経過を説明した。

このあと、小林教授の憲法論からする反論があるのであるが、1年半後に迫るグレーゾーン廃止問題はそれほど単純な問題ではない。グレーゾーン廃止とは、出資法制限金利、つまり刑罰金利の適用を年利20%超とするものであり、この20%超の年利を取得した者には刑罰を科せられるということである。消費者保護のためとは言え変幻極まりない取引市場への規制に刑罰をもってすることが好ましいかどうかはこれ自体検討する必要はある。

暴利行為は刑罰をもって処罰し、利息制限法違反については民事的救済をもって対応する、つまりこれまでのグレーゾーン金利と呼ばれる領域を私的自治にゆだねるという在り方も必ずしも非合理とは言えないと言えなくもない。

 

広がり始めた多重債務問題解決の新しい担い手達

全国のクレジット・サラ金被害者の会と、これを支援する弁護士・司法書士からなる「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」による活動は、多重債務者への救済運動として今も粘り強く続けられている。しかしその運動にも関わらず、一般国民の支持の広がりを面的に得るまでには至っていないようにみえる。

その理由の一つとして「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」自体が、入会に会員二名の推薦を要件とするなど、一般の弁護士司法書士にとっては必ずしも開かれた団体であるとは言えないということと、クレサラ被害者の会の持つ独特の活動スタイルや哲学に反発する多重債務者の方たちも少なくはないからだ。「被害者」という位置づけ自体に屈辱感を感じる多重債務者の方達も多い。

とすると、「今年3月時点で、1年前と比べて多重債務者を31.1%減の117万7000人に減少」させたものは一体何であったのだろうか。年間4000億円という不当利得返還請求を可能とさせたその担い手は一体誰だったのであろうか。どんな団体だったのであろうか。

実は、それはインターネットなどを通して活発に広告を展開し多重債務者にサービスの提供を呼びかけて来た全国多数の、普通の弁護士、司法書士達に他ならない。特にこの数年来、多重債務問題を扱う弁護士や司法書士が急増しているがその影響力の拡大には驚かされる。交通機関や各種メデイアにおける弁護士や司法書士のクレサラ広告は今では少しも珍しいものではなくなった。最近になりやっと提供するサービスの価格を明示する事務所も増え、依頼者は価格やサービスの内容を選択出来るようになりつつある。これからは、価格競争もサービスの質の競争もさらに本格化して行くことであろうと当時は期待されていた。

弁護士先生、司法書士先生の事務所の敷居はとっくに低くなっていた価格競争、広告自由化、認定司法書士制度導入、それはまさに小泉規制改革のもたらしたものといえるが、これにより得られた結果、成果を、どう評価すれば良いのだろうか。改革により国民の得た利益、損害を回復した利益は4000億円と大きかった。

改正貸金業法が目的とする多重債務者ゼロの健全な消費生活、消費市場の実現、これは少数先鋭な職業的運動家や政治的活動家達だけでは決して実現できるものではない。公共団体の積極的な消費者への援助と専門家との連携、協力はもちろんのことであるが、まずは自ら普通の経済生活を営む多数の弁護士や司法書士が、多重債務問題の解決を日常の仕事にすることが出来て初めて実現出来たことなのである。

ヤミ金バスター、100人の従業員を抱える若き石丸弁護士は、ついにモーニングショーのレギュラーコメンテイターになった。クレサラの世界においても、職業的左翼指導者に指導された伝統的な大衆運動やイデオロギーの時代は去り、市民の目線で仕事をして行く弁護士や司法書士のような、30代40代の人達の時代が来たと思われた。

自殺者や夜逃げを多く出した1980年代、1990年代の多重債務者救済の主役は、宇都宮弁護士、木村弁護士指導するクレ対協と革新系団体が率いる被害者の会であった。そこに帰属していた司法書士は数える程であった。この時代の弁護士報酬つまりサービス価格は、弁護士会の規制価格であったから、弁護士法違反となるので減額も出来ず、結局、自己破産するにも高い弁護士報酬を払えずに夜逃げする多重債務者も珍しくなかった。一件20~30万円代で自己破産を受任する弁護士も少なくない時代となった。自己破産百万円時代と比べれば実に隔世の感がある。

さて2008年、5月17日、東京平河町の砂防会館で、東京司法書士会の定時総会が開催された。執行部への質疑応答の際、支部代議員会員から会の多重債務電話相談や司法書士会無料相談が減少しているのではないかという質問があった。これだけ多重債務問題や過払い金返還請求問題が社会的問題となっている時に信じられないことだが、応答に立った常任理事の話では、司法書士会ばかりでなく弁護士会においても会の主催する相談件数は減少していると言うことだった。

広告価格競争禁止の独占時代には、強制会が事件を集め、それを会員に配当するという仕組みが機能していたのだがそれが機能しなくなりつつあった。多重債務者はわざわざ四谷の司法書士会館や霞ヶ関の弁護士会館に行かなくとも、インターネットや広告で、もよりの司法書士や弁護士を選んで直接相談に行っているのだろう。開かれた市場で多数の弁護士や司法書士が、直接、顧客との出会いを果たしている。その結果が多重債務者3割減と4000億円の不当利得金の回収だった。これを誰が喜んでいるのか。多重債務に追い込まれたその人達であろう。それから10年、市民への開放には、今、弁護士界でも司法書士界でも反動の波が押し寄せてきている。

 

過払い金請求で弁護士、司法書士は儲けすぎか?

さて、3月30日のサンデープロジェクトでのクレサラ過払い金4000億円についての議論の後半では、弁護士報酬について議論が白熱した。

レギュラーコメンテイターのエコノミスト 吉崎達彦氏は、法学部の議論は経済学部の常識から見ると理解できない観念的議論が多い、何で多重債務者救済のための方法が利息制限法しかないのか、他に救済方法がいろいろ考えられるのではないか。

市場取引を規制すれば金融収縮が起こり、貸し金需要がある以上アングラ経済が広がるばかりということにならないか。私は日本の今の司法に強い疑問を感じている。横領で逮捕される検事はいるし変な判決はあるし、変な弁護士も一杯いる。こんなことを見るとどうもこの過払い金返還請求は、実は弁護士を儲けさせるだけのものではないかという手厳しい意見を述べていた。

これに対し木村弁護士は、このような事件の処理は大変手間ひまかかるもので、これで儲かるっていうものではありませんと反論。儲けている弁護士もいるが先生達はそうではないということですかと田原氏。いやいやそんなことはない、とにかく皆さんには借金においこまれた多重債務者の現実をもう少し細かく見てもらいたいと木村弁護士。今日に至るには最高裁判決を勝ち取るためにどれくらい私達が苦労して来たか、分かって欲しいと新里弁護士は法廷での苦労を強調したが、結局、弁護士とエコノミスト、この両者の意見はかみ合わないまま番組は終了した。

番組に出席したのは「クレサラ対協」に属する弁護士であったがこれは偶然ではない。この日の番組自体が2月3日のサンデープロジェクトにおける出席者竹中平蔵、木村剛、田原総一郎氏あての「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」の抗議文に端を発しているからだ。

「クレサラ対協」が金融独占資本主義反対の「正義派」とするなら、一方には業界で評判の悪い競争主義のビジネス派ということになるが、「正義派」の人達は、業者間競争や、報酬に関することになるとどうも歯切れが悪い。

「クレサラ対協」幹部の宇都宮健二弁護士が最近「自己破産と借金整理法」の全訂新版を自由国民社から出版されているが、その末尾に東京3弁護士会の債務整理等に関する標準報酬規定が掲載されている。「クレサラ対協」の木村さん達は、このような表をもとに、具体的に、弁護士の提供する標準サービス価格を国民に示すべきであったと言えるし、一方では、現実のクレサラ市場はエコノミストの先生方が想像している以上にニューエコノミー化が進展している。このような現状も説明するべきだった。

東京三会のこの標準報酬は弁護士や司法書士の一応の目安とはなっているが、価格競争に積極的な事務所の料金は、大体この標準料金より安い価格設定となっており、そのような事務所がどんどん大きくなって、いわゆる儲かる事務所となっている。

私はこの国民の利益に直結する価格問題についてはいずれ問題となると思っていたから、我々のような法律事務サービス料金の正当な価格とは一体何かということについては5年以上前から私なりの価格理論を、法律新聞紙上で論じていた。

しかし、この弁護士会3会の標準料金ですら、その根拠は何かと問われれば「正義派」の人達には答えられないのではなかろうか。グーグルで債務整理費用を検索してみると最初のページの6番目に「多重債務ラボ 任意整理費用は高すぎるのでは?」というサイトが掲示されていた。

その中に「任意整理で儲けるってどういう気分ですか」という皮肉たっぷりの批判的コメントが掲載されていた。実際は、厳しい競争の中で、儲ける、すなわち多数の依頼人から支持を受けるためには、優秀で想像力に満ちコミュニケーション力のある、しかも心の優しくふところ深い事務職員を多数維持して行かなくてはならないから、経営は一般の中小企業に比べ想像以上に難しいものなのであるが。

 

弁護士・司法書士長者を産んだ債務整理ビジネス

「任意整理で儲けるってどういう気分ですか?」

多重債務者Aさんは、「任意整理で儲けるってどういう気分ですか?」というタイトルで次のようにも主張される。多重債務者の任意整理は「多くの費用を掛けてでも広告を出す価値があるほど、儲かるビジネスということだ。性善説的な見方をするならば、自分が犠牲(広告料)を払ってでも多くの人を救済する義務があると考えている弁護士や司法書士もいるかも知れない。会ってみたいが・・・、残念ながら多くがそうではないだろう。そこまでする人が多くいたならば、ここまで多重債務問題が大きくなることは無かったはずだ」。

「自分が犠牲(広告料)を払ってでも多くの人を救済する義務があると考えている司法書士」はいた。実際、そのような司法書士や弁護士が多数いれば、Aさんのいうように実際「ここまで多重債務問題が大きくなることは無かったはずだ」ったのである。

しかし、この10年「自分が犠牲(広告料)を払ってでも多くの人を救済する義務があると考えている司法書士」を誹謗中傷したり司法書士会の諸会議などで妨害抑圧してきたのが、マンション登記司法書士たちやそれに同調する一部の司法書士会役員たちだったのである。

Aさんは「対価が高額過ぎるのではないだろうか。・・協会や関係各所において弁護士や司法書士の役割をもう一度考えてもらいたい」と言われるが、そのような言葉や世論を待っているのは、実は業界の一部仲間うちの排他的助け合いや既特権保持のために、法律サービスの市場化、競争化に反対して来た人達なのである。

Aさんは問う。「あの料金設定は妥当なのだろうか?」と。私は「東京3弁護士会の債務整理等に関する標準報酬規定」自体も独占禁止法に違反するのではないかと公正取引委員会に文書で問い合わせたことがある。何故かといえばそのような規定を明示することで料金競争が阻害され、価格設定がその基準価格に高止まりしてしまうからだ。

Aさんは弱者である多重債務者に提供するサービスに適正な価格があるのではないかと考えておられるのかも知れないが、客観的な適正さを示しうる基準、根拠などというものはない。市場経済の大原則どおり価格は需要と供給で決まるのであり、問題はその市場が十分競争的であるかということが唯一の適正さの根拠となるのである。Aさんは、生活感覚から高すぎると思われるのであろうし、間違っているとも思わないが、これを弁護士や司法書士の倫理問題として追求するとすれば、弁護士、司法書士間の市場競争を抑圧する結果を導き出し、かえって供給者に対する国民の選択権を狭めることになって、その意図とは反対に消費者が大きな損害を被ることになるだろう。

「東京3弁護士会の債務整理等に関する標準報酬規定」は、多分、小事務所の得る利益を基準に決められたものであると思われる。そのような価格であるとすれば、その価格を基準に多数の顧客にサービスを提供したとすれば、そして同一同品質のサービスを提供したとすれば、多く顧客を得たものが儲かるのは当然のことである。

Aさんが、弁護士や司法書士に求めるべき正義は、実は、弁護士や司法書士に、弱者への自制や思いやりといった検証不能の感情や倫理ではなく徹底した競争と競争における正義のルールの厳守なのだ。

法律業務独占者の設定した独占価格のもとで、余剰利潤を得て儲かって、更に営業を拡張しようという弁護士、司法書士たちを価格においてもサービスの質においても、相互の競争をさらに徹底させるように、そのための情報開示や説明義務を消費者が厳しく追及するそれによって、始めてAさんの目的は達成されることになる。

このような競争をとおして、独占事業者から余剰利潤を剥奪して、はじめてAさんの納得する料金も実現されるということだ。もちろん小事務所も、新規参入の弁護士も司法書士も、競争の結果低下した料金よりもさらに安い価格で質の良いサービスを提供すれば多くの顧客を得ることが出来る。

認定司法書士制度が導入されて、任意債務整理の弁護士独占時代が終わったのは平成14年のことだ。司法書士がこのクレサラ市場に参入することが出来るようになり、それが利益目的であれ動機はともかく、全国の多くの司法書士がこの市場に参入した。その結果、多重債務者の法律サービスへのアクセスは飛躍的に拡大したのである。

その結果、平成18年200万人いた多重債務者は平成19年3月時点で117万人に減少した。この200万人の多重債務者は、消費者金融業者が作り上げたものであるが、これを可能とさせた責任は弁護士にないとは言ってもらいたくない。実際、Aさんのいうように「自分が犠牲(広告料)を払ってでも多くの人を救済する義務があると考えている司法書士や弁護士が多数いれば、ここまで多重債務問題が大きくなることは無かったはずだ」ったのである。

債務整理市場での弁護士司法書士間の本格的価格競争は未完のまま、むしろ今は司法書士の法律事務は衰退の方向に向かっているようにすら思える。今では、新規弁護士司法書士の参入者は激増したが、提供するサービスの質と価格という点では全くの玉石混交、混乱というのが現状ではないか。

質の競争も始まっている。価格競争を前提としたサービスの質の競争。これこそが重要なのであり、これが消費者に真の利益をもたらすことになるのだが、司法書士はこの試練を乗り越えていくことができるだろうか。法律の解釈力と弁論の力でどこまで弁護士の力に迫ることが出来るか。それが司法書士の最大の問題だ。

 

「選択の自由」と「取引当事者間における平等」

市場経済においての基本ルールは、取引当事者間において、「選択の自由」と「取引当事者間における平等」を実現し維持することである。別の言葉で言えば、供給者と需要者間での価格形成につき、その公正を確保するということでもある。そこにおいては独占的供給者の「優越的地位の利用」という概念が非常に重要になってくる。

圧倒的に強者である消費者金融業者と個人債務者との関係にもこれが言える。現在の過払い金返還請求の源流は「昭和39年11月18日貸金請求事件最高裁大法廷判決」に見ることが出来るが、この判決が着眼したのも、債務者に対する貸金業者の「優越的地位の利用」という点にあった。

市場秩序を維持し、取引の公平公正を実現するためには、供給者の「優越的地位の利用」を利息制限法により規制せざるを得なかったのである。貸金業者対個人債務者ということであればこのサービス供給者の「優越的地位の利用」ということは極めて見えやすい。

しかし、多重債務問題解決のための事務サービスを供給する独占事業者、弁護士や司法書士と依頼人との取引においても、この「優越的地位利用」という関係が成立し、これを規制する必要があるのであるが、この「優越的地位の利用」に関しては、法律家を自認する弁護士、司法書士自身が全く無頓着である。

そして弁護士会、司法書士会は、同業者間、他資格業者間での競争規制、倫理、正義には熱心なのに利用者国民との取引においては、その正義の実現には今日においてもはなはだ消極的なのである。そして多数の弁護士、司法書士による「優越的地位利用」が今日においても平然と行われているのが、供給するサービス価格の領域である。

取引における「優越的地位利用」については別に詳述する予定であるが、ここで債務整理費用の具体的な内容を「東京3弁護士会の債務整理等に関する標準報酬規定」から見てみることにする。

 

任意整理(債務整理)の費用

 

任意整理(債務整理)とは、裁判外で債権者と債務者の代理人となった弁護士や司法書士が返済条件の変更を話し合って和解書を作成し紛争を解決する手続きである。

その任意整理の費用は、①着手金 ②報酬金 ③分割弁済金代理送付手数料の3個からなる。

① の着手金とは何かといえば総費用の一部前払い金と言えるが、事件処理が弁護士の辞任または解任により中断した場合の取り扱いは様々である。着手金全額を返済する者、実費控除後の金額を返済する者、損害賠償金として返済しない者等弁護士や司法書士によって様々であるが、事件受任時にその取り扱いについて依頼者に説明しない事務所も少なくない。

事件依頼時には、早期有利な解決を望んでいる依頼人は、その内容について専門家に聞きにくいのが人情であるから、これについては、弁護士、司法書士の側から事前に説明しておくべきであろう。「東京3会標準規定」には着手金の内容についてはその説明がない。

さて「東京3会標準規定」によると
① の着手金の額は(1)債権者1社から2社までの場合、5万2500円 (2)債権者3社以上の場合 2万1000円×債権者数 但し、同一債権者でも別の支店の場合は別個の債権者として勘定するとなっている。

5社から借り入れている標準の多重債務者の場合、事件依頼時には着手金として、10万5千円を用意しておかねばならない。多重債務者にとってこの10万5千円は決して少ない額ではないから、依頼時にこの着手金の内容を依頼人があらかじめ弁護士、司法書士に聞いておくことは重要だ。弁護士、司法書士の辞任または解任時に着手金全額没収ということであれば、没収を怖れる依頼人の解任権が拘束されてしまうことになりかねない。解任しにくくなるということだ。

 

任意(債務)整理費用のまとめ

以上が年間4000億円の過払い金返還市場を支えている弁護士、司法書士の手続き費用の概要である。

「東京3会標準規定」の弁護士費用、報酬が高いのか安いのかこれを判断することは出来ない。委任報酬の価格であるから、そのコストの計算の基準となるものを数量的に客観的に決めることはそもそも不可能であるからだ。

高利借金の返済に追われている多重債務者の支払い能力から見れば高いに決まっているが、供給する側から見れば、特に月に一人か二人の多重債務事件を扱っているような小事務所にとってみれば、事件の解決に時間を要し必ずしも容易とはいえない手間隙かかる任意債務整理事件であれば必ずしもこの標準料金が高いとも言えないのである。結局、業者間競争を活発にさせその結果として成立した価格こそが適正なものと評価せざるを得ない。

司法書士の中には、結果もやることも同じだから弁護士と同等の報酬をとって何故悪いという人もいる。先に紹介した司法書士がその一例だろう。この理屈を否定することは出来ないが大方の司法書士は弁護士の2~3割から半額の報酬で(例えば自己破産40万円を20万円という具合に)多重債務事件を受けている場合が多い。

業者間競争の活発化といっても、それが同業者間の競争では競争も当然に絵に描いた餅となる。ここに制度間競争が導入されればその競争も本格化する。新幹線と飛行機の競争のようなものだ。その点、認定司法書士制度の導入は画期的なものだった。これまでは画然と区別されていた司法書士と弁護士が法廷で出会うことになって、その弁論をとおし、司法書士は弁護士の実像を知ることになる。司法書士は始めて弁護士にもピンからキリまであることを知るし、一方、弁護士も又、司法書士にもピンからキリまでいることを知るのである。

認定司法書士の制度は、法廷を法曹3者の独占から解き放し、法廷を国民により身近なものにした。そのことはあまりにも明らかである。国民の間に司法書士の二流視があったとしても法廷においてそれを打ち破る成果を上げれば国民はそれを正しく評価するのである。

そして何よりも認定司法書士制度は、弁護士報酬の独占価格にくさびを入れた。特に債務整理の分野においては、その手続きの実体を知る先進的な弁護士事務所ほど、司法書士による価格競争を怖れている。優越的地位を利用した報酬額の隠蔽体質は、クレ対協加入の弁護士も変わらないだろう。クレ対協の数ある出版物の中でも、その中に債務整理に関する弁護士報酬に関する記事を私は未だに見たこともない。

もちろん良心的な弁護士で「東京3会標準規定」にも関わらず多重債務者の返済資力を考慮して、安い報酬で債務整理事件を受託している人が少なくないことは良く知っている。しかしその報酬価格と提供するサービスの内容を国民に公開しなければ、国民は絶対納得しない。行政が今国民から激しいバッシングを受けているが、司法にもその日が来ないとは言えないのである。

社会国家とか法秩序の安定とか、かっては法律家の合言葉であった言葉を今は聞かない。戦後から高度成長の時代、あの時代には決して戻ることは出来ない。その時代の分業秩序にも決して戻ることはない。一定の規律のもと、ピンからキリの専門化相互が顧客獲得を目指して競争することが人民に幸せをもたらすことになる。さて、以下、さらに自己破産の費用、個人再生の費用について見て行くことにしよう。

 

平成20年過払いバブル天井に

2008年(平成20年)8月、今から一昔、10年前の頃、債務整理のテレビコマーシャルがついに登場するなど過払い金返還と任意整理の広告が一段とヒートアップした。五反田駅前での法律事務所の宣伝用ティッシュ配りには私も驚いた。インターネット広告も決して安い費用ではないが検索エンジンも爆発しないかと思われるほどの人気ぶりだ。これには当事務所の補助者も眉をひそめるといった具合であるが、広告宣伝と価格競争の業界仕掛け人は私なのでこの業界広告フィーバーを非難する積もりも無い。むしろこうした大衆的宣伝の自己露見が、もったいぶった弁護士司法書士業を、いよいよ普通の勤労市民に身近な存在とする。しかし問題なのは、価格とサービスの競争がその大量宣伝に伴っていないことだ。この債務整理ばやりに、開業司法書士の多くが債務整理分野に進出してくる。しかも開業早々成功している司法書士も少なくない。

事務的にその外観を見れば訴訟をしなければ債務整理は登記に比べても簡単な事務で権限さえあれば誰にも出来ると言って過言ではないだろう。

事務手続きの内容は ①各債権者に受任通知を送る。②取引履歴を債権者から取り寄せる。③利息制限法にエクセルを使って再計算する(最近では計算代行屋さえ出現している)。④分割弁済の和解契約書を作る。基本的には以上の事務につきる。

このような作業で、独占的に稼げるのであるから、ここに仕事の無い弁護士や司法書士が殺到するのも当然と言える。アメリカではこのような任意債務整理は、特に資格も要さずコンサルタントやカウンセラーが低廉な費用で行っているのだが、弁護士法や司法書士法はこのような業務でさえ独占して、一般国民がこの事務を業とすることを、非弁、非司、と名づけ禁圧している。

 債務整理は、国民の消費生活の再建とその援助が目的だ。その趣旨に沿ってこの債務整理を業として行うならば、個人の経済生活に深く立ち入ることが求められかつ精神的な立ち直りまで支援しなければならないからそれほど容易な仕事ではないのである。

ところが大半の事務所が①~④の業務を形式的にこなしているだけというのが実情である。私の事務所では転送電話で夜中でも債務者の相談に対応しているが、稼ぎを優先すればそこまではなかなか行かないのだ。単に債務者の苦情を聞き、債権者の請求を止め、再計算し、分割弁済契約書を作るだけなのなら、任意債務整理の仕事などは、一定の試験などして他業種多資格者にも場合によれば主婦にだってその業務を開放して良いのではないかと思う。弁護士司法書士は今や広告業者の絶好の売り込み先となっているようだが、その莫大な広告費を負担できるのも任意債務整理業務の弁護士司法書士独占から得られる余剰利潤にその原因があるのである。

 しかし、それにも関わらず、簡単に債権者からの請求を止め弁済金を減少させ、生活立ち直りの機会が消費者に広く与えられたことは大きな福音と言わねばならない。現状ではおそらく家計の実態把握や返済資力などを考慮せずに債務整理が実行されているのであろう。私の事務所では過払い金請求で、8割以下の返還金では必ず訴訟をして損害を回復するようにしているが、認定司法書士制度は5年になるのに東京簡易裁判所で見かける司法書士は少ない。このことが何を意味するかは明らかだろう。安易な任意整理と余剰利潤こそが莫大な広告費の源泉となっている。広告解禁で、国民消費者は、未だ十分とは言えないが、これにより多くの弁護士、司法書士の中から自分にとって好ましい弁護士、司法書士を選択する自由を得た。そのことは公開された情報や評判を自ら調査吟味して、自分にふさわしい代理人を選択し、その選択の結果については自らも責任を負うということをも意味するのである。

 

多重債務者激減

2007年(平成19年)改正1年目の昨年2月末の多重債務者177万人が、10月末には139万人となり、わずか8ヶ月で多重債務者は40万人も減少したということは、2008年8月現在、10ヶ月間でさらに50万人以上の多重債務者が減少しすでに100万人を切っている。

過払い金返還請求額も2006年の2000億円から2007年の4000億円に倍増したということは、多重債務者の増加率、減少率にこれも比例するとすれば、近いうちに4000億円から2000億円以上の減少、想像する以上に急速に債務整理市場は減少するだろう。ということは縮小しつつある債務整理市場において、新規参入した司法書士、弁護士を含め、急速に減少しつつある顧客をめぐっての弁護士司法書士の競争が激化、その結果としての広告合戦と見ることが出来る。「多重債務者のいない社会を目指して」これが貸金業法改正の目的であったから、その目的は、司法書士、弁護士の顧客獲得競争によって信じられないような速さで実現しつつあるということだ。規制改革の効果はこのようにして現れた。

さて、債務整理の分割支払いの目安は、裁判所はかねてから3年、36回の分割を基準とし、特定調停においては3年で分割弁済の目途がつかなければ自己破産を勧めるというのが原則であった。5年6年と消費者が借金返済を背に負い生活を再建してゆくというのは実際上困難であるからだ。私の事務所も任意整理はこの基準で進め、3年分割弁済が困難であれば個人再生で弁済金をカットして返済するか、自己破産を勧めるのが普通である。

しかし、任意整理であるから自己破産だけは避けて何とか返して行きたいという人も少なくない。その場合には本人の意思を尊重し、返済途上での一部一括弁済なども視野に入れながら債権者と交渉して行く。その結果、分割90回の和解ということもある。しかし現実には5年内に早期返済している人も多い。ただこれから考えられるのは債務整理で返済資力を上回る分割債務を負った多重債務者の返済破綻である。消費者をとりまく経済環境は、景気停滞物価上昇と厳しくなる一方である。急減した多重債務者もあくまで軽減されたとはいえ借金返済の負担を負っているのだから、このような家計にとって、日常生活費の高騰は特に厳しいものとなる。住宅ローンなどを抱えている人たちにとってはなおさらのことである。こうして見ると急減した多重債務者の何割かは数年後、自己破産又は個人再生を選択せざるを得ないことになるだろう。

自己破産、個人再生は手続きが複雑なばかりかその費用は決して安くはないし、裁判所の厳しい監督下に一時おかれる。素人でも訓練すれば出来る任意整理、アメリカではカウンセラーが商売としている任意整理、「①各債権者に受任通知を送る。②取引履歴を債権者から取り寄せる。③利息制限法にエクセルを使って再計算する(最近では計算代行屋さえ出現している)。④分割弁済の和解契約書を作る」という作業に比べれば、自己破産、個人再生の手続きは法の規制下で行われるから格段に難しい。また自己破産については最近の改正法で裁判所書記官の権限が強化されるなど、審査も強化された。任意整理のようにどこの法律事務所、司法書士事務所でも安易に出来るというわけには行かなくなっている。

さてその自己破産の費用についてである。弁護士「東京3会標準規定」によると、着手金が21万円、免責が得られた場合、基本報酬金が21万円から、合計42万円以上となっている。以下、この内訳の詳細につき述べて行く。又、生活困窮者への法律扶助制度についても述べておきたい。

 

10年前(平成20年頃の)の弁護士会の自己破産費用

「東京3会標準規定」(弁護士会)によれば自己破産の費用も①着手金と②報酬金とから構成されている。

① 着手金は㋑債務金額が1000万円以下の場合、債権者数に応じてⒶ10社以下の場合、21万円以内 Ⓑ11社から15社まで、26万2500円以内 Ⓒ16社以上、31万5000円以内 ㋺債務金額が1000万円を超える場合、債権者数にかかわらず42万円以内となっている。

② 報酬金は、免責決定が得られた場合にのみ、着手金と同額以内の金額を受領できるとしている。

つまり、実際に多い債務金額1000万円以下で債権者10社以下の場合には、免責決定が出れば42万円の費用が自己破産の手続きにかかるということである。司法書士の場合の自己破産費用は着手金、報酬金含めて20万円前後の事務所が多い。

ここで問題となるのは、先の任意整理費用の解説においても述べた破産着手金の性格である。そこで、着手金の性格につき「着手金とは何かといえば総費用の一部前払い金と言えるが、事件処理が弁護士の辞任または解任により中断した場合の取り扱いは様々である。着手金全額を返済する者、実費控除後の金額を返済する者、損害賠償金として返済しない者等弁護士や司法書士によって様々であるが、事件受任時にその取り扱いについて依頼者に説明しない事務所も少なくない」と述べたが、このような事情は自己破産の着手金についても同様のことが言える。管財事件となって管財人の費用が払えなくなったり、免責不許可となるような事実が後に明らかとなったような場合に、自己破産の申し立てを取り下げるようなことがままあるが、破産着手金の金額が高額なだけに、すでに支払い済みとなった着手金を返還してくれるのかどうか、これは破産者にとって重大な問題となる。それにも関わらず「東京3会標準規定」はこの着手金の取り扱いについては何も述べていない。辞任、解任の場合にも同様の問題が生ずる。

法律は依頼者を保護するために、受任弁護士や司法書士に対し、締結した委任契約について無条件の解約権を依頼人に認めているが、ここでも任意整理の場合と同様の問題が生ずる。自己破産者にとって、この破産着手金21万円は決して少ない額ではない。自己破産依頼者は、依頼時にこの着手金の内容をあらかじめ弁護士、司法書士に聞いておくこと、それが極めて重要なことになる。弁護士、司法書士の辞任または解任時に着手金全額没収ということであれば、没収を怖れる依頼人の解任権が拘束されてしまう。依頼後手続き進行中に、弁護士、司法書士を解任しにくくなるということだ。これについては、弁護士会は「東京3会標準規定」において、受任弁護士側から事前に説明しておくべき義務を明記しておくべきであろう。

 

アメリカに無い「着手金」てなんだ?

弁護士「東京3会標準規定」は、着手金の取り扱いについて不明瞭で、金額は競争に任せるとしても、ともかく消費者国民の立場にたってもう少し具体的な指針を明記する必要がある。又、国民自身が国の助力を得て問題解決の出来る任意債務整理である特定調停という手段の存在や、法テラスによる法律扶助の制度があることも価格表の末尾にでも明記するべきであろう。

さてここで金融庁の多重債務者に関するデータを紹介しておこう。全国信用情報センター連合会からの情報によれば、消費者金融5社以上から借り入れをしている人は、改正貸金業法の施行された昨年、平成19年2月時点では176万8千人いたが、10ヵ月後の12月末には125万4千人、約50万人減少し、翌年の今年、平成20年5月末には109万1千人となった。その4ヵ月後の現在、平成20年9月、多重債務者数はすでに100万人を大きく下回っていることが推定される。長年、200~300万人いると言われて来た消費者金融による多重債務者は、貸金業法の改正でわずか2年に満たない期間で100万人以上減少したわけである。

この劇的な減少に、認定司法書士の果たした役割は、直接的にも間接的にも極めて大きかったと認めざるを得ないであろう。多重債務者の減少は国民の健全な家計の維持、借り入れに依存しない家計の自立に貢献するとともに、消費者信用市場の健全化をとおして国の経済、金融秩序の安定にも寄与することになる。一方、激減する顧客を巡って債務整理弁護士、司法書士の競争も日々激しさを増している。「東京3会標準規定」にも関わらず、手続き費用も徐々に安くなりつつあるから、利用者国民は、供給側の弁護士、司法書士の提供する価格やサービス内容についての情報を十分比較検討しながら、早く借金を整理して再スタートを切ることが重要だ。しかしここで見落としてならないのは、多重債務者数は激減しているものの1人あたり借入金残高は、昨年2月時点では117万円、今年5月で104万円とそれほど減じてはいないということである。

これは多重債務者が債務整理やおまとめローンで複数社からの借り入れを一本化又は整理したものの、弁済すべき債務そのものは残っているということを意味している。消費者物価の上昇や今後の日本経済の成り行きではせっかく借金の負担を軽減した家計が再び苦境に陥るということも十分予想される。苦手であるかも知れないし金にならないかも知れないが、これから債務整理弁護士、司法書士に必要なのは健全な家計指導とか事業運営指導とかカウンセリングサービスの提供であろう。弁護士、司法書士にとって2006年、2007年、2008年の3年間は、列島過払いバブルそのものだった。しかし早くも過払いバブルには秋の気配がただよいはじめている。広告屋さん、インターネット屋さんたちが弁護士、司法書士に最後の営業を必死にかけている。

消費者金融30年、フランシスフクヤマのいう権威主義的資本主義の生み出した仇花、それが消費者金融だった。その花も間もなく枯れる。クレサラ対協もその怨敵であった私も、間もなく舞台から降りることになる。私の司法書士人生は不動産バブルから始まった。そして過払いバブルとは、よほど私はバブルに縁が深いらしい。しかし私の司法書士人生は終わらない。オンライン登記申請時代という新しい時代が待っている。

 

ワーキングプアーの時代始まる

デイヴィッド・K・シプラーの「ワーキング・プア アメリカの下層社会」(岩波書店)の34ページに「彼女は破産宣告するにしては貧しすぎることに気付いた。彼女には弁護士費用として700ドル、申請手数料として200ドル必要だった」という記述がある。デイヴィッド・K・シプラーのこの著作の題名が、わが国でいうワーキングプアーという用語の起源であるが、これによればアメリカでの自己破産の弁護士費用は7万円であるから、弁護士「東京3会標準規定」の自己破産料金40万円はアメリカの弁護士費用の5倍以上であることが分かる。政府に払う200ドルは、日本の裁判所に払いこむ予納金1万5千円~2万円と大差はない。続けてシプラー氏は述べる。「彼女は、破産宣告するかわりに、ファイナンシャル・カウンセラーのもとを訪れた。カウンセラーは、もし元金が定期的な分割払いで完済されるなら、利率をゼロに下げるようクレジットカード会社と交渉するのが習わしだった。しかしアンは、そのオプションをとるにも貧しすぎることがわかった。カウンセラーは、彼女の低収入、出費、資産の完全な欠如を見て、支払いは出来そうもないと、彼女に告げた。・・・

(それからアンは)歯ぎしりしながら『道徳問題を脇に置き』、3月にはクレジットカードの支払いをやめ、食費をいくらか節約して、7ヶ月間貯金し、10月に、ついに(自己破産)申請に必要な900ドルをかき集めた」。同様なケースは日本でも多いし、弁護士でも司法書士でも費用の分割払いに応じるようにはなりつつある。しかしその支払額は900ドルではなく、日本の場合は4000ドルなのである。もっともこの自己破産費用については国の「法テラス」による援助がある。司法書士が多重債務者のためにこの制度を活用し、又は多重債務者がこの援助を「法テラス」に申し込めば、「法テラス」登録会員の弁護士、司法書士を紹介してくれてこの援助を受けることが出来る。

この場合の司法書士にかかる費用は10万円で、その支払いも5千円の分割となる。法律扶助制度が出来て10年以上となったが、私の事務所では依頼者がその支給要件を満たす限り法律扶助金を活用して自己破産手続きを進めてきた。10年もたつのにこの制度が未だに国民に知られていないのは、報酬が半額以下となってしまう弁護士や司法書士の国民への紹介斡旋に対する消極性にあるのだろう(最近の任意債務整理フィーバーを見ればそう思う)。多重債務者が激減したといっても返済元本が無くなったわけではない。

返済能力や返済原資を無視してひとまず債権者からの請求を止め、分割で一息ついているのが多重債務者大多数の、今日の実情ではなかろうか。消費者環境や雇用環境はこれから日々厳しくなって行くと大方のエコノミストが予想しているが、そうなってくると、毎月3万円から5万円の返済も家計を健全に維持するためには大きな負担となってくるだろう。がんばって3~5年返済するか、思い切って自己破産をして毎月2~3万円の貯金をして行くか、これで10年後の生活は大きく変わる。もし2~3年の弁済の実績でもあれば裁量免責を得るのも有利になるだろう。消費者の、真の家計再建と再スタートに、これからは、自己破産や、住宅ローンを抱えている人には個人の民事再生が、重要となってくる。自己破産の場合には一定の所得の要件の制限はあるが国の扶助制度という支援もある。

 

貧乏の科学という学問は何故ないの

さて今回は、債務整理料金公開の最後に個人の民事再生の費用はいくらかということを説明することになる。そして、次いで、債務整理の費用負担に対する国側の対応、すなわち税金で支えられているシステムによる貧者の救済の手段の紹介をする

思い返せば、実に私は、自己破産を含めたこの債務整理の世界に関わって15年、専業になって10年ということになった。その間、今でもしばしば考えることがあるのだが、それは何故この国にも世界にも、学問として「貧乏学」という学問がないのか、「貧乏の科学」という研究がないのかということであった。学問という以上、ある法則性、体系性、こういうものが無ければならないのだろう。しかし貧乏科学には、そうした要件、可能性が十分満たされているのではなかろうか。一般的に言えば貧乏法則は、極端な欠乏が極端な欲望を生み、満たされているかに見えるものに対する憎しみを生み、さらには果てしなき報復感情を再生産する。

凡人である我々は、大いに嫉妬心も優越感情も劣等感情も持っているが、体験をとおし大体そこそこのところで、おのれの限界を知り、自己満足の世界の範囲を区切って、そこでことを終わらせることになっている。

しかし極端な「貧乏」というものは、凡人の欠落感、物理的不足感とは違うのである。その心の底には、どうやら憎悪、攻撃、不寛容という暗く悲しい情念が刷り込まれ染み込まされているようなのだ。この「貧乏」の呪いは金持ちになってもなかなか消え去ることはない。このような現象を統計化し、そこにある法則を見出すという研究、学問が何故出来ないのだろうか、実に不思議である。極端な「貧乏」は、「報復」と「支配」、凡人に対する「優越の実現」という過剰な情熱を生みだす。その結果、自由主義と民主主義という社会制度に不可欠な、しかも要素であるところの「寛容」という美徳と原理を奪い去ってしまうのである。私は64歳になるけれど、知り合いの中には、ずい分偉くなった人もいるが、「貧乏」という背後霊をいまだに背負っているように見える人が決して少なくない。与えて楽しむ、いっしょに遊んじゃうという気持ちの楽しさ、今を生きる、こういう喜びは自足的で楽しいものだがそれを喜びに思う贅沢な人は日本人にはまだまだ多くないようだ。

さて、今年、平成20年7月18日開かれた「多重債務者対策本部有識者会議第8回」での議論で、《グリーンコープ生活協同組合ふくおか》の生活再生相談室長の行岡みち子氏は、「債務整理による法的解決はずいぶん普及しているように見えますが、債務整理後の生活再生に向けた家計診断やカウンセリング相談、金銭的に不足を来たした時の生活資金の相談や経済的サポートは殆どなされていません」と発言されている。手続き需要に着眼して金儲けに熱中する弁護士や司法書士を非難するつもりはさらさらない。行岡氏のいう「債務整理による法的解決はずいぶん普及しているように見えます」という状況は、まさに手続き需要に着眼して金儲けに熱中する弁護士や司法書士が、利益の追求故に大量に生じて競争が激化したその結果によるので、正義の「被害者の会」や「クレサラ対協」がいくらアッピールしてもとても実現されることはなかった。

多重債務者が救済され、昨年170万人いた多重債務者がわずか1年たらずで100万人減ずるなどということは決して有り得なかったのである。しかし手続きサービスの外観と業務独占だけを利用した金儲けには限界もある。線香花火のような過払いバブルは来年で終わる。これから重要なのは儲からないが行岡氏のいう「債務整理後の生活再生に向けた家計診断やカウンセリング相談、金銭的に不足を来たした時の生活資金の相談や経済的サポート」なのだ。個人の民事再生はこのような文脈の中で非常に重要な手続きとなってくる。個人の民事再生手続きは法定の手続き期間も半年以上かかるしその管理も大変である。安易な債務整理と違って個人の民事再生手続きの経験者は、弁護士にも司法書士にも極めて少ない。そこで弁護士の個人再生手続き費用は50万円以上となる。裁判所の再生委員の費用20万円以上と合わせれば個人再生手続き費用は実に70万円以上となるのである。

高すぎるというのが私の感情だが、弁護士、司法書士の貧乏な人に対するこの酷薄はどこから生まれるのだろうか。それを考えれば、私の貧乏研究によればこれも実は貧乏に起因する、平均的弁護士も司法書士も大企業社員よりもはるかに貧乏だという事実に起因すると結論されるのである。焼け跡から60年余、焼け跡の頃は、麻生総理大臣より、人民の誰も彼もが貧乏だった。正義に生きる宇都宮弁護士も、その敵である、一杯の掛け蕎麦のタケフジの元社長もまた焼け跡の生み出した産物であったのである。

 

個人民事再生って何

個人の民事再生は、今はまだ知られていないが、多重債務者の債務整理が急速に広がり、多重債務者が急速に減少してゆく中で、これから非常に重要な手続きとなる。それが何故かと言えば任意債務整理をしてひとまず家計が落ち着いたところで、収支を冷静に見直してみれば、4~5万円の毎月の返済も実は家計にとって負担過重ということが明らかとなる場合が少なくない。

返済に追われている中で債務整理を決意し、月の分割返済可能額を、債務者自身が見積もったとしても、債権者からの催告に追われ自転車操業をしていたという直前の事情もあってその前提としての家計の実体を債務整理依頼の時点で正確に評価するのは当然に困難である。さらに債権者からの催告が止まれば家計の再建や、将来に対する見通しも楽天的となる。求めがあれば別ではあるが、専門家も個人の家計の将来設計にまでは立ち入ることは出来ない。

実際の家計の状況が依頼者自身によって把握できる様になるのは、債権者から請求が止まり、半年ほどして債権者への分割弁済が始まって半年から1年後である。この1~2年間に家計を建て直し、毎月定額の貯金をして行くというのが借金生活に縁を切る第一歩となるのであるが、しかしこの再建中にも個人的にも社会的にも様々な再建にあたっての障害が生じて来る。勤務先の事業不振、ボーナスの減額、消費者物価の高騰・・こうした外部要因が弱体化しストック、貯金の少ない債権者の家計を襲ってくる。このような外部経済要因の直撃を受けるのが毎月10万円から15万円の住宅ローンを支払い続けている家計であり、消費経済の変動要因は、住宅だけは確保しようとして何とか破産せずに債務整理をして分割弁済を続けている家計を直撃する。このような家計の救済策が住宅ローン特例付個人民事再生なのである。この制度によれば、住宅ローンはそのまま維持しながら、居住は確保しながら、残存財務をおよそ8割がたカットし残り2割を36回で返済して行くということが出来る。その個人消費者救済型の手続きの費用が、弁護士「東京3会標準規定」によれば、以下のとおりである。

個人再生の費用は
① 着手金 31万5千円 住宅ローン特例付きの場合 42万円 
② 着手金に加えられる報酬金が ㋐ 債権者数15社までで事案簡明な場合 21万円 ㋑ 債権者15社までの通常事案 31万5千円 ㋒ 債権者16社~30社の場合 42万円 
ということである。

普通の住宅ローンを抱えた4人家族の給与所得者が、弁護士に依頼して住宅ローン付再生をしようとすれば、少なくとも63万円を弁護士に支払うことになる。司法書士が個人再生を受任した場合には裁判所から再生委員を付される場合が多いが、この再生委員の費用20万円を加えても司法書士の方がはるかに安い。もちろんこの弁護士費用は、東京3弁護士会の標準料金に過ぎないからもっと安く受任している弁護士も少なくないだろう。債務整理をすればもうどこからもお金は貸してくれない。だからお金は、今後の生活再建にとても重要である。今では、弁護士、司法書士の債務整理広告が市中に氾濫している。それだけに消費者の皆さんは、その中から費用を明示している弁護士や司法書士を選んで、面倒見の良い事務所を、自己の責任において選択するべきだし、自分に合わなければ何時でも解任出来るということも忘れないでおこう。

 

もっと活用しよう、法テラス

弁護士、司法書士の債務整理費用についての市民からの苦情を別項で以下のように紹介した。

「グーグルで債務整理費用を検索してみると最初のページの6番目に『多重債務ラボ 任意整理費用は高すぎるのでは?』というサイトが掲示されている。
・・・・・多重債務者Aさんは、『任意整理で儲けるってどういう気分ですか?』というタイトルで次のように主張される。多重債務者の任意整理は『多くの費用を掛けてでも広告を出す価値があるほど、儲かるビジネスということだ。性善説的な見方をするならば、自分が犠牲(広告料)を払ってでも多くの人を救済する義務があると考えている弁護士や司法書士もいるかも知れない。会ってみたいが・・・、残念ながら多くがそうではないだろう。そこまでする人が多くいたならば、ここまで多重債務問題が大きくなることは無かったはずだ』。

全くそうなのだ。NHKの市販DVDによれば、女性事務員の希望をくんで銀座で事務所を開き、その後、自己破産ビジネスを共産党系民商の大衆組織、被害者の会で集客展開し今日に至っている宇都宮弁護士は、そのようなAさんの疑問に、どのように答えるのであろうか。弁護士司法書士の広告解禁に反対し、司法書士への簡裁代理権付与にも反対し、よく知られていることだが、そのことにもっとも熱心な反対論者だったのが宇都宮弁護士であった。

さて、さらにAさんは言う、『もし過去完済分の過払金(158万6千円)がなかったら、任意整理したとしても、返済額が若干減るだけのことで、借金苦状態は全く改善されなかったという結果になっていたかもしれないのだ。・・弁護士や司法書士は、そりゃ儲かるだろう。・・多重債務者という弱者を相手にする商売にしては、対価が高額過ぎるのではないだろうか。・・協会や関係各所において弁護士や司法書士の役割をもう一度考えてもらいたい』と訴えている。加えてこの報酬は『実際に携わった時間と報酬から時給に換算すれば、目が飛び出るほどの高時給になるはずだ。実際のところは当事者達は伏せたがるだろうが・・』とも指摘する」。

今日では、Aさんの指摘、非難に対し、国の救援組織「法テラス」の対応で応えることが出きる。自己破産について言えば、司法書士に依頼すれば、10万円、1000ドルで自己破産できる。債務整理については一社700円の印紙代で裁判所の特定調停で問題解決は出来るのである。Aさんもこのことをご存知ないらしい。そうした、この国はこの国なりに、税金を使って国民、市民のために、救済制度を用意しているのだがそのことを知る人は少ないのである。宇都宮弁護士は最近は消費者問題の専門家としてTVにご登場しているようだが、元祖、自己破産、クレサラ被害者の会代表として、このような国の救援制度の存在を是非メデイアでピーアールしてもらいたい。クレサラ被害は今も終わったわけではないのだ。

 

法テラスの無料法律相談

法律新聞08年(平成20年)10月24日の司法書士会版の「多重債務相談2日間で508件」という記事があった。この508件を多いと見るか少ないとみるか評価は分かれるだろう。それはともかく、この記事の中で「債務整理をしたいが、専門家に相談する費用がない」という相談者の声の紹介があった。この相談会は東京都消費生活相談センターという役所と八王子市が、弁護士20人、司法書士11人を動員して実行したとのことであるが、その相談者の中に「債務整理をしたいが、専門家に相談する費用がない」という人がいたというので驚きである。

相談だけであれば、法テラス(前法律扶助協会)では10年も前から無料であったし、最近は債務整理を扱う司法書士、弁護士の事務所の多くが無料相談をしているし、今やそれが常識化していると言って良いと思われる。それにも関わらず記事になるほど「債務整理をしたいが、専門家に相談する費用がない」という人がいたということは専門家と称する集団、司法書士会、弁護士会の金銭的エネルギーに対する「倫理」的エネルギーがまだまだ不足している証拠なのではないのかと私は思うのだ。

法テラス(前法律扶助協会)と私の付き合いは法律扶助協会設立準備室以来の長い付き合いで、貧困という所得要件を満たせば私の事務所に訪れた相談者にはほとんど法律扶助協会、現法テラスを紹介してきた。その紹介者数は、通算すればおそらく東京では私の事務所が第1番であったように思う。しかし現場の事務職員は別として、法務省からやってきた管理職や一部の審査員の弁護士からはあまり歓迎されず、むしろ妨害、攻撃されることもしばしばあった。日本人というものは、特に公務員は、救いを求める国民に対して、やさしくもないし寛容でもない。感情が硬直して固まっている。この公的、国民の税金でもっとも弱い人々を救済するために作られた制度が、このようなものであったので、私はそのことに心の底から嫌悪を感じたのであった。法テラスの理事に私の高校時代の同級生の元裁判官がいるが、このような現実を彼は知るまい。平野先生の弟子であった彼は秀才ではあったしなかなかいい奴ではあったが現場のことは分からないだろう。それで良いというものでもないが。

特定調停も制度が出来たときから私はそれを随分活用し、何度も調停の現場に立ち会った。そこで感じたのも裁判所の「愛」の欠落であった。責めるつもりはない。というのはそれが今日の支配的な立場にある日本人の共通の性格と思われるからである。しかも「愛」という概念、思想は日本の文化にはなくそれは欧米起源の思想であるからだ。株価が7000円台になって国中大騒ぎ、嬉しいのか悲しいのか分からないが、1930年代の大恐慌の再来とマスコミは囃したてている。確かに来年はかなり深刻な事態にはなるだろうが、なるはずだが、この世界的騒ぎも、実は金融のIT化の失敗という特殊現象なので、この金融デジタル取引を作り上げたアメリカこそが、まさに自国の利益のために、日本国や世界のためにではなく、幕引きもするだろう。アキバの総理大臣にその幕引きの能力を求めてもそれはどだい無理というのは誰にも分かっている。ただ確実に予想されるのは、明日からの混乱の中で、戦後作られた日本の偽善の仕組み、オールドエコノミー体制が、今度ばかりは完全に自己崩壊するであろうということだ。

 

株価が7000円割った

平成20年、10年前のこと、株価が一時7千円を割り込み、マスコミは1930年代の世界大恐慌の再来とそれを喜ぶかのように大騒ぎしていた。家賃(資産)収入のある年収3000万円の金持ちの収入が2000万円になって、消えた1000万円の資産収入による金持ちの消費をあてにしていた人達の商売も立ち行かなくなりつつあるということで、大騒ぎするようなことでもない。

確かに大変な事態ではあるが、しかしそうでしかなく、それ以上のことでもないということだ。「怒りの葡萄」に描かれた1930年代の世界大恐慌の再来ということであれば、日本の戦後闇市状態にもどることでもあるが、今日の産業社会の技術的構成からすればそのようなことは絶対に無い。トヨタのクラウンに乗っていた人がダイハツの軽自動車に乗り換えることになるだけの話である。それで何が悪いかということではないか。20年前のバブル時の朝毎読の報道も、満州事変から敗戦時までの朝毎読の報道もそして今日の金融ITバブルの崩壊報道に関しても、大新聞の報道姿勢は少しも変わらない。

サンデープロジェクトの元左翼コメンテイター、田原さん、元民青同盟幹部の高野さんらのはしゃぎぶりにはうんざりである。アメリカ帝国主義の金融独占資本体制が崩壊し、世界の経済圏はブロック化し、関税引き下げ競争とダンピングにより惹き起こされた貿易保護主義と国家主義の台頭による第三次世界大戦の勃発!というようなことは小林漫画の世界にのみ起こりうる話である。

オールドエコノミーの復活もありえないし、共産党社会党そして労働運動の復活も残念ながらない。発行部数が減るばかりの大新聞、朝刊の匂いも回復しない。宮沢憲法学と東大官僚による法秩序も復活しない、サザエさん一家もよみがえらない。ぼんやりとした不安で芥川龍之介は自殺したがタケシが自殺するとはとても思えない。こんな時には、世間を無視して美術館に行ったり、クラシックのコンサートに行ってシューベルトのアルペジオーネソナタを聞きながら居眠りをするのが一番だろう。

「農産物および原料の生産が相対的な価値を失い、工業『生産』が工業『雇用』から解放されて、すべての先進社会で知識集約的な製品が支配的となり、世界的な資本の流れがしだいに貿易パターンと切り離され」て行く。「要するに、神の御業にによる介入がなくても、あるいは核爆発による悲惨な大火災が起こらなくても、世界の大国の間には主としてテクノロジーと経済変化というダイナミズムが引き続き存在し続ける」(ポールケネディ「大国の興亡」下巻242P 1987年 草思社)。今回の金融危機は結局、金融への情報技術の運用についてそのコントロールに失敗したということなのだと私は思う。市場経済の失敗であるとか資本主義の限界であるとかそのようには全く思わない。技術上の問題であれば少し年月と痛みはともなうにしても「技術的に」克服されて行くだろう。こんなことで左翼の亡霊に復活されてはたまらない。社会主義は国民全員が公務員となることを意味する。個人は「社会という観念」に殺されてしまう。犯罪があろうと詐欺師が活躍しようと、それは個人の自由という価値の維持のための代償なのだ。

 

オバマ当選でビックリ、今、トランプでビックリ

大事件である。世界最強の国アメリカに、黒人の大統領オバマ氏が大差で当選した。21世紀の姿がようやく見えてきた。黒人大統領の出現には、日本のマスコミ、職業的言論人の反応はこの大事件にいささか困惑気味、冷淡ですらあるように思われた。民主主義は、フランシス・フクヤマ氏がいうように必ずしも資本主義にとって必要とされる制度とは言えない。

資本主義にとってはシンガポールやアジアの多くの資本主義がそうであるように権威主義的官僚主義的国家制度の方が効率よく機能する場合が多い。富国強兵時代の日本がそうであったし、焼け跡復興時代の日本の官僚主導による重商主義時代もそうであった。1776年7月4日、アメリカはイギリスおよび世界に対し独立宣言をして、そこにアメリカ合衆国が成立した。それから230年、文化的背景にはキリスト教があったにしても、基本的には移民達による純粋な社会契約によって成立した、始めから理想主義的な、理念的な国家であった。

その国家の目的は、個人の自由であり、それを抑圧する一切の力、権力を抑制するのが新生国家の使命であった。幸いにこの国の国土は広く資源も豊富で他国を侵略する必要も植民地を他国に求める必要もなかった。そのことがこの国の楽天的で寛容な国民性を育んで来たといえる。この国に形成された資本主義は、独立宣言によって得た個人の自由と自立的な努力の産物だったのであり、この国にとっては、資本主義という生産様式とは別に、それに先立って、民主主義こそがかけがえの無い価値だったのである。その伝統は、経済のグローバル化、ニューエコノミー化という生産様式の大変動にもかかわらず今日も生きていた。

それを象徴するのがオバマ黒人大統領の登場だった。11月9日のサンデープロジェクトではエコノミスト財部氏が、金融危機さなかのアメリカでの見聞をレポートしていたが、そこで財部氏は、アメリカの有力なエコノミスト、言論人にはサブプライムローンに始まる金融危機に対して驚くほど危機感が少ないと慨嘆していた。

日本のマスメデイアが騒ぎすぎなのである。アメリカ人は前世紀1930年代の大恐慌の再来とも思っていないし、資本主義の危機とも市場経済の破綻とも思ってはいない。膨れ上がった消費者金融市場が縮小し、それにともなう生産調整が数年、長くても5年くらい続くだろうと考えているだけのことである。何故ならアメリカの国土は広く資源も豊富で人口も増加し、さらに技術レベルの優越的地位も失ってはいない。その上未だに軍事力も世界最強である。ただグローバル化、ニューエコノミー化がもたらしたアメリカ国民の福祉への歪みをただすべく、アメリカ国民は、《アメリカ国民の幸せのため》に「変化」を求め、その変化の担い手として黒人大統領オバマ氏を大統領に選んだのであった。

人種偏見の強い日本人が、帰化外国人を日本国の総理大臣に選任するようなことがあるだろうか。これから経済法則に基づいて当然にアメリカの消費経済は縮小する。これを不況というがオバマ氏はそれの深化拡大が故にアメリカ国民から拒絶されることはないだろう。オバマ氏はただそれのもたらす損害を最小にすべくアメリカの知的物的資産を最大に活用するように努力するはずだ。

国内市場を犠牲にして貿易に依存するという明治以来の日本経済の重商主義的な体質を、日本人は今日に至るまでついに変えることが出来なかった。これから始まるアメリカの大不況は、この日本国の構造を変えることが出来るのだろうか。官僚と大企業、大労働組合、大組織からなるオールドエコノミーから、情報技術を柱とする個人の創造性とベンチャー精神からなるニューエコノミーに移行することが出来るだろうか。「国土は広く資源も豊富で人口も増加し」ているのはアメリカばかりではない。中国もロシアもブラジルもインドも同様である。今や諸大国の狭間にある少子高齢化の列島、それが日本なのだ。イエス、ウイ、キャンと日本人民が合唱できる日は何時くるのだろう。

 

さよなら、クレサラ市場に晩鐘がなる

2007年、平成19年2月、5社以上からの借り入れのあるいわゆる多重債務者数、176万8千人は、2008年平成20年9月現在、97万人に激減した。30年近くかかって作り上げられたクレサラ市場がわずか1年半で半分になってしまったわけだ。

この30年間苦労してきた被害者の会、クレサラ対協も、そして我々もこの年末は大いに勝利の祝杯をあげなくてはなるまい。古くはアダムスミスが国富論の中でその病理を指摘している多数の自殺者まで出した異常な無担保消費者金融が、この国で何故これほどまで長期に栄えその存在が容認されてきたのか、これについてはその原因について厳しく総括される必要があるであろう。

最大の原因の一つには法律的な消費者救済手段の供給が、弁護士の利益確保のために極端に制限されていたという事実を指摘せざるを得ない。平成10年からの10年間は、多重債務消費者、国民救済のための私の事務所の10年間であったと同時に、それは、又、一部クレサラ弁護士独占の市場を、拡大開放するための10年でもあった。

独りよがりの倫倫品品を建前にした法律サービス独占を、市場競争ベースに引き落とす、消費者主権者の利益のための孤独な戦いであった。今回の貸金業法の改正、金融業者にとってみれば規制の強化が、規制改革に逆行するというエコノミストからの批判もあるが、それはミクロ経済学の原則的な理解からしても間違っている。

消費者金融市場は、規制がなければ必然的に市場の失敗を惹き起こすものであり、「逆選択」という病理、選択の自由という市場の正義に反する取引が跋扈する典型的な市場なのである。生産力の無い消費者という資金需要者に対して、貸し手である供給者はそのリスクに対し当然に高い金利を要求する。返済資力のない借り手は、返済資力がなければないほど、貸し手側の資金コストを無視して、どんなに高い金利であろうと後先を考えずに借り入れを申し込むであろう。貸し手にとって危ない借り手ほど高い金利を要求することになり、もともと返済不能な借り手側は踏み倒し逃亡する。モラルハザードとはこのことを言うのである。

このような貸し手と借り手の取引を規制するのは法律しかない、それが利息制限法である。しかしこのような法律があってもその正義が国家権力によって実現されなければ何の意味も無い。その実現の手段、サービスを提供、供給するのが弁護士であり、その供給を、業務独占を手段として制限してサービス価格を業者間協定で吊り上げていたとすればこれほど正義に反することはない。

実は、消費者金融の発展と弁護士の正義を看板とした業務独占が平和共存していたのがクレサラ市場の最初の20年間であった。しかしその後の10年間で、特定調停制度、法律扶助協会、認定司法書士制度、弁護士大増員と、消費者救済の制度が充実するのと平行して、高額独占の弁護士クレサラ市場は、広告自由化、価格競争自由化とあいまって徐々に開放され、消費者国民にとっての選択の自由は大いに拡大した。

この段階に至り、私は、今度は、消費者国民の皆さんに、確かに未だに十分とは言えないかもしれないけれど、選択の自由が拡大すれば、それに比例して選択の責任もあると主張したいのである。消費者国民に対して専門家の優越的地位を利用して今でも弁護士、司法書士のボッタクリはあるが、しかし今日では公開された情報から、良い弁護士、司法書士を選択することは10年前よりもはるかに容易になっている。その努力を惜しんではならない。これまで弁護士司法書士の債務整理(任意整理、個人再生、自己破産、公的救済制度)に関する費用の目安を明らかにしてきたのは、勤労市民、国民の皆さんの債務整理手続きの選択の参考にして頂くためであった。

私が弁護士業界、司法書士業界初の自己破産三行広告を産経新聞に出したのは20年以上前に遡る。このおかげで私は東京会理事の地位を辞任せざるをえなくなり、クレ対協の宇都宮弁護士には提携司法書士と中傷されるはめとなったが、その理事辞任劇の仕掛け人であった某役員司法書士のクレサラ広告が私の住まいの郵便受けにジャンクメールに混じって入っていた。30年間の消費者金融の繁栄と没落の裏側で繰り広げられた、正義の独占事業者達による喜劇悲劇も間もなく終わるのだ。               

 

あぶく銭は国が持ってゆく

「多重債務の整理を専門に請け負っていた東京都港区の平田季則司法書士(38)が、2007年までの2年間で約2億4000万円の所得を隠し、所得税約9000万円を脱税したとして、東京国税局から所得税法違反容疑で東京地検に告発されていたことが分かった。

・・・関係者によると、平田司法書士(38歳)は、消費者金融などの借金を抱える多重債務者の任意整理や自己破産などを手掛けていたが、受け取った報酬のうち一部しか税務申告していなかったという。平田司法書士は修正申告に応じているとみられる。 平田司法書士は04年、法相の認定を受け、簡裁の民事訴訟や民事調停で弁護士と同様に代理人を務めることができる「認定司法書士」の資格を取得した。・・・ 日本司法書士会連合会は「脱税容疑で告発された認定司法書士は、聞いたことがない」としており、処分を検討している。 同連合会によると、08年12月現在、司法書士約1万9300人のうち、認定司法書士は約1万1500人。 認定司法書士制度は03年に導入され、過払い金返還請求訴訟などに取り組むケースが増加しているという。」(中日新聞 2008年12月12日 夕刊)という報道が先週末12月12日テレビを含め全国に一斉に流された。

不動産不況や景気の長期停滞で、司法書士会会費の支払いにすら困っている司法書士も多いというなかで、2年間で2億4千万円の所得を隠していたというのだから驚きだろう。弁護士の不祥事も増えておりその報道も珍しくはないが、司法書士の不祥事でここまでスケールの大きいものは前代未聞と言える。

本シリーズの22回で「多重債務者Aさんは、『任意整理で儲けるってどういう気分ですか?』」という消費者からの意見を紹介したが、弁護士や司法書士の債務整理や過払い金返還請求事件に対する高額な報酬に対する批判が広がるなかでこの報道は誠実に多重債務者の救済に携わっている特に司法書士には深刻な打撃を与えるものではないかと思われる。

先日、私の属する品川支部で久しぶりに支部会員の半数ほどが集まって懇談会を開いたが、長引く消費者不況と不動産不況で、登記案件が減り、なかには開業以来の売り上げ減少という会員もいた。品川支部には50人ほどの司法書士がいるが、その大半は年収1000万円前後、そこから経費を引けば実質所得4~500万円というところではないか。それ以下、年収300万円以下、いわゆるワーキングプアレベルの会員も少なくないものと思われる。

そのような中で5~6人の品川支部会員が債務整理案件にも対応しているが、登記本業の売上高が減る中で、2~3割の債務整理による売り上げは、この登記不況に耐えて行くのに大いに貢献しているのである。このような事情は全国でも同じであろう。そのような状況の中での今回の9000万円脱税事件だ。これでは全国の認定司法書士が人の弱みで稼ぐ悪い奴らということになってしまうではないか。まだ告発されただけのことであるから、起訴されるかどうか、脱税犯として有罪が確定するかどうかも不明だが、結果によっては東京会は、債務整理に10年以上の実績のある司法書士を集めて特別調査チームを作り、委任契約から事件処理、金銭の受け渡し、提供したサービスの実体などを調査し公開する必要があるのではないか。

特に債務者の家計の実情などを細かく把握し、その結果をもとに、どの解決手段がふさわしいのか、分割返済の資力可能性を検討したかどうか、その結果、任意整理が良いのか、個人民事再生は活用できないか、自己破産が良いのか、そのような認定司法書士としての判断をしているのか、扶助協会の利用や特定調停制度等の国の救済策についても説明しているかどうか、これらの実体を綿密に調査するべきだろう。

 

認定司法書士制度施行後の5年間

認定司法書士の制度が出来て5年間、その僅か3~4年の間に、債務整理事件で急成長した事務所が多い。その中の一つが平田司法書士事務所だった。その多くが任意整理、過払い金狙いだったといえば露骨であるが、その事実を否定できる者はいないだろう。

司法書士の代書権を根拠として10年以上前から本人訴訟や自己破産を、弁護士から嫌味を言われながらやってきた司法書士である私から見ればその有様はいかにも危なげであった。しかし、特定の弁護士司法書士(クラサラ対協や被害者連絡協議会、民商)に半ば独占されていた多重債務者への救済窓口が一挙に拡大したのも認定司法書士制度のおかげであった。それにより消費者、多重債務者の得たメリットは、そのデメリットをはるかに上回る。貸金屋からの利益剥がしが弁護士司法書士の成長産業となりバブル化すれば、それへのマスコミ、社会の批判は当然に厳しくなる。その成長ビジネスのリーダー、石丸弁護士は、石丸氏への批判に対しついに週刊新潮を訴えた。石丸氏は彼のホームページのトップでその経緯を公開している。そこで石丸氏は訴状も公開しているが、それによる事実の経過は:

被告山室は、本件記事の末尾において「今後、弁護士法違反での懲戒請求も考えているようです」と司法記者の発言を引用する体裁で記述し、一般の読者に対して、あたかも原告が弁護士法違反の行為を行い、これにより懲戒処分を請求されるかのような誤信を与える事実の摘示を行い、原告の名誉を著しく毀損した(甲2号証の2)

というものであったらしい。

これに対し石丸氏は:

しかも、前段では原告をホリエモンになぞらえた上で、原告の事務所が急成長を遂げていると紹介し、原告の主張を無視して相手方の何等合理性のない主張(相手方の主張の当否は法定で争うことになろうが)をあたかも真実であるがごとく紹介し、一般の読者をして原告の急成長の裏には「破産社(原文ママの財産の費消)」「高額な弁護士費用」があり、これらによって原告が懲戒を受けるとの誤信を与えるものであり、断じて許容できない。

ということである。

 そもそもこの記事の素材となった、破産管財人の訴えに対する石丸氏の反論である準備書面も氏のホームページに公開している。そこで石丸氏は、

「第1 本件請求の法的根拠について原告は,破産手続を受任した弁護士は,財産を適正に管理して引き継ぐ信義則上の注意義務を負うと主張し,係る注意義務違反による不法行為が成立すると主張しているように思われる。しかし,各論に入り込むまでもなく,そもそも当該主張自体失当である。」と反論する。

さらに
「確かに,一般論として債務者ないしは破産者の財産散逸を防止し,債権者の適正な配当に備えるべき役割が申立代理人に期待されていることは理解できる。しかし,それはあくまでも道義上の期待であり,道義上の責任ですらない。いわんや法律上の責任など導き出しようがないのである。破産法第40条や破産法第83条が申立代理人に対する義務を説明義務や調査応諾義務に止めているのも,申立代理人にはそもそも財産の管理処分権が存しないことを大前提としているからである。この点,原告は信義則ないしは実務書により注意義務があると主張しているが,これまで申立代理人に対して信義則を根拠に係る請求が認容された事例は当職の知る範囲で存在しない。また,原告がその主張のよりどころとする実務書においても,法律上の義務として財産を適正に管理する義務が存するなどとは一言も述べられていない。・・・」

とも主張されている。

 上記に紹介したものはホームページ上に公開されたものの一部であるが、公開されている全文を見ても、これだけでは事件の真相は見えてこない。破産管財人とのやりとりは、我々の場合は債務者同行の上でのやりとりとなるのであるが、破産管財人が石丸代理人の何をもって石丸氏を訴えるに至ったのか、原告破産管財人の訴状もアップしてくれれば我々の破産手続き援助の参考にもなろう。又、「週刊新潮10月26日号」の問題とされている記事も公開されていないのでそれも公開して欲しいと私は思う。それが被告に対しても公平というものではないか。

 広告自由化を機に、債務整理で大発展している法律事務所はホームロイヤーズを皮切りに、ITJ事務所など他にもいくつもある。アデイーレ事務所はその中の一つであるが、いずれの事務所も司法書士を雇用して発展を遂げている。弁護士含めた法律業界で始めて公正取引委員会の賛意をもとに広告を出稿した私としては、それらの事務所を、法律家の新しいビジネスモデルとして常に肯定的に注目して来たのではあるが。

 

増大する弁護士、司法書士の不祥事や懲戒事件

 債務整理事件に関わる司法書士の脱税事件、増大する弁護士、司法書士の不祥事や懲戒事件、処理事件数が激増、債務整理市場が大きくなれば、それだけ一定の割合でトラブルも生ずる。であれば、そこに注目して規制を強化すればそれで良いのかと言えば、困るのは一般国民、過重な消費者金融からの債務に苦しむ消費者その人達であろう。

しかし、この債務整理クレサラ市場が国民の前に公然と姿を現したのは、平成10年来のことである。認定司法書士制度が機能し始める5年以前には、少数の弁護士達が業務をほぼ完全に独占する極めて狭い隠された世界であった。

そのため多数の多重債務者たちはどこに相談に往けば良いのか、皆目見当もつかないような状態であった。そこに突然、利息制限法違反、過払い金返還請求、消費者金融への過払い金はがしという、わが国にしかないニュービジネスが登場し、不況で仕事の少ない弁護士や認定司法書士がそこに殺到した。当然、脱税ばかりではなく多重債務者集客のためのあの手この手の不正もまかりとおるようになる。その中でも、弁護士、司法書士の不正のうちでもっとも注目されるべきなのは、多重債務者リストの売買であったり、リスト所有者との業務提携である。

この種の不正はかなり前からあったが、最近は半ば公然と行われ、商工ローン系などはその借入額も多いから当然に返還過払い金も多い、そこで商工ローン系債務者名簿が数千万円で取引されているという。こうした名簿を買い、又は業務提携しているような弁護士や司法書士は、一時期、相次ぐ懲戒処分などで影を潜めたかのようであったが、最近では、経験の少ない合格して間もない司法書士や、集客や広告も出来ない司法書士が、業者から電話勧誘などで顧客名簿を買ったり業務提携していると、私自身、消費者金融の管理担当者から話を聞くことも多くなった。

このような方法で集客している弁護士や司法書士には、債務者国民の家計を建て直すなどという視点などは全く無い。ただ債権者の請求を止めて、利息制限法への再計算をし、過払い金を請求し成功報酬を得るだけだから、面倒な自己破産や個人再生の手続きなどはしない。当然、金にならない特定調停や国の法律扶助制度などを紹介することもないし自己の事件を持ち込むこともない。

また事務補助者まかせで、事務補助者の監督指導なども全くしないし、指導できる能力の無い資格者すらいる。こんな弁護士、司法書士が少なくないのである。最近のことであるが債務整理業務を事務補助者にまかせ、世界一周旅行に行ったという大阪の豪傑弁護士が弁護士資格を剥奪された。法テラスの無料法律相談で法テラスからの相談料を稼ぎまくり本件を一度も法テラスに持ち込まなかったという司法書士数名に対する苦情の抗議が法テラスから司法書士会に持ち込まれたということだ。情けなくてあいた口がふさがらない。法律上の業務独占を良いことに、こんな稼ぎ方をしていれば、儲かり過ぎて自分の所得も分からなくなり税務調査に脅えてしまうのは当然だろう。

一部少数にしても派手な広告費の負担に耐えるほど、債務整理の弁護士、司法書士は、一体、何故そんなに儲かるのだろうか。理由ははっきりしている。そもそも、私の経験では、任意整理、過払い金訴訟、個人再生、自己破産という4つの債務整理手段を、消費者の家計にあわせて適正に指導できるようになるまでには、資格者でさえ、5年以上の経験は必要であると考えている。これを端折って、請求止め屋、再計算屋を専らとしていれば儲かるに決まっているではないか。ようするに稼ぎの効率のために法律家としてなすべき義務を怠っているのである。大体債務整理相談が30分や1時間で終わるわけはないのである。もっとも請求ストップ計算屋司法書士の、効率、それによる当然の高収益ビジネスが直ちに違法であるかといえばそうとも断定は出来ない。

問題は、彼らの手抜き部分が、価格に反映していないところにある。つまり彼らの儲けの要素である「あるべきサービスの手抜き分」が、価格から控除されていて、それなりに安ければ、利用者はそれを評価して、請求ストップ計算屋司法書士の安い債務整理サービスを、むしろリスク承知で意識的に選択するかも知れない。これにより消費者の選択の幅はさらに広がるのである。

 

消費者の利益、分業の利益、法律家の理想論

あるべき業務の理想的モデルをもって、ろくに実際に仕事もしていない書斎派司法書士や弁護士が、派手な宣伝と請求ストップ屋司法書士を非難するのは容易だが、実は、非難するよりも重要なのは、彼らが提供しているサービスの実質以上に彼らを儲けさせないことなのだ。独占による超過利潤を得させないことだ。

それはどうすれば可能か。それは提供するサービスの内容の公開を含めて、さらに競争市場を機能強化させて行くしかない。徹底した情報公開によって消費者の選択能力を高めて行くしかないのである。そのことは、名簿屋からのリストの購入とか不正な競争手段による荒稼ぎとは全く別の問題である。

20年の哀しい歴史を持つクレサラ市場においても、価格と質の市場競争は確実に進展している。4~5年前の市場は、ホームロイヤーズやITJ、アデイーレ事務所などの寡占状態であった。しかし、最近ではその寡占状態も崩れつつある。彼らの売り上げも新規参入者の増加で減少しつつあるかも知れない。そのようにして、確実に債務整理サービスの供給は増え、サービス料金も低下の方向に進んでいる。しかし、その半面で、供給されるサービスの実質を見ればとても十分なものとは言えない。例えば、これは一般の債務整理に関わる弁護士や司法書士にも是非聞いてみたいが、消費者の家計にとって重要な、住宅ローン、各種保険、教育費などについて、どれほどご存知であるのか。

金儲け主義の弁護士司法書士も問題だが、クレ対協、被害者の会系弁護士、司法書士も、問題である。消費者金融やクレジット会社、商工ローンを高利貸しとののしっていれば彼らの独りよがりの正義感情は満足するだろうが、依頼者国民の真の願いは家計の再建にこそあるので、法律的処理をしてもらうこと、それがその目的ではない。法律的処理、解決は、あくまでその手段に過ぎないのである。こうした国民生活の立場に立ってみれば、低金利ローンへの借換や、家屋の売却、掛け捨て保険への切り替えなど、法的処理以外にも債務圧縮、健全家計への回復手段は多様にあるのであり、資格者は、国民から頂いたその独占業務を、もっと広い視点から、心の癒し、カウンセリングも含めたサービスとして提供して行かねばならないのである。

ここではっきり言いにくいことを言わせてもらえば、結局、人生経験や社会経験も少ない資格試験的法律知識しかない弁護士や司法書士が、そのことを自覚せず、いきなり儲かるらしいとのうわさを聞いて国民の家計に首をつっこむということ自体、大いに問題なのである。司法書士会のクレサラ研修のありかた、現状については、そのような観点からも問題がある。マスコミは、どうやら認定司法書士の債務整理訴訟について過大評価しているようだが、実態は全く異なる。100万円の請求権があれば、訴訟は面倒なので業者から5割なら即金で支払うなどと言われてそれを安易に承諾し、20~50%の成功報酬金を頂くというようなやりかたをしているのが少なからぬ最近の司法書士なのである。

司法書士の訴訟費用は平均10万円と、これがクレサラ訴訟の費用であれば高すぎる。私のところなどは認定制度始まって以来、クレサラ訴訟は何回期日があろうと5万円でやって来て損もしていない。この訴訟費用の安さと実績が、消費者金融との和解交渉を有利に進めるのに大いに貢献している。今回の、司法書士脱税9千万円事件は、債務整理に踊りまくる認定司法書士には最高の良薬となった制度の見直しが予定されている認定司法書士制度が国民の間に定着するかどうか。低額の一般訴訟をせずもっぱら任意整理にあけくれる認定司法書士が国民に制度として認められるかどうか会務と懇親会に忙しいだろうが、あらためて司法書士会執行部は心すべきであろう。

終わり